獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「夏・スイカ・体温の関係」

7~8月といえばスイカのシーズンです。家族構成の変化から昔のように大きなスイカを1個買うことは少なくなり、スーパーでは1/4くらいにカットされたものや、皮が剥かれてカップに入ったものが売られています。

【夏をイメージするスイカ】

現在では1年を通して野菜や果物が手に入りますが、本来は旬というものがあります。みなさんがイメージする各季節の食べ物は何でしょうか?

夏を感じる食べ物

女子栄養大学の柴田圭子らは旬の感覚の実態調査として、四季をイメージする食べ物の聞き取り調査を行いました(1997年)。対象は女子大学生(1年生、2年生:合計204人)と高校教員(平均年齢38.9歳:22人)です。

これによると夏を感じる食べ物の第1位はスイカ、続いてトマトやナス、キュウリとなりました。ちなみに春はタケノコ、イチゴ、秋は栗、サンマ、冬はミカン、白菜という結果でした。(年齢が若いと果物を中心とした回答になる傾向がありました。)

スイカの糖分

スイカの美味しさは豊富な水分と甘さです。この甘さの成分は果糖、ショ糖、ブドウ糖という3種類の糖分です。スイカの果肉の各部位と糖分濃度の関係を見てみると、赤い中心部と種がある中間部はほぼ同じような糖分構成になっています。これが皮に近い外側部分になるとショ糖量が少なくなり、糖分全体量も減少します(加納恭卓 石川県農業短期大学 1991年)。

3種類の糖の甘さレベルは果糖>ショ糖>ブドウ糖となっています。スイカを食べ進み、皮に近くなると甘みがだんだん無くなるのは、主にショ糖が減少するためと考えられます。

スイカの廃棄率

先程のアンケート結果では、夏の食べ物としてスイカの他にトマトやナス、キュウリがあがっていました。これらの中でもスイカは一番廃棄率が高い食材です。廃棄率とは皮やヘタといった、一般には食べずに捨てる部位の割合をいいます。

日本食品標準成分表(2015年版七訂)に記されている廃棄率では、トマト(3%)、ナス(10%)、キュウリ(2%)であるのに対し、スイカは40%と高い値です。スイカは緑に黒の縞模様の硬い皮だけでなく、果肉部分も食べるにつれて甘みが薄くなる白い外側部分など廃棄する部位が大変多い果物です。

しかし、このスイカの食べずに捨ててしまっている部位には、貴重な健康機能をもつシトルリンという栄養成分が含まれていることをみなさんはご存知でしょうか?

【スイカに含まれるシトルリン】

スイカの栄養分を考えても、水分が豊富であることくらいしか頭に浮かびません。しかし調べてみるとリコピン、βカロテン、K(カリウム)などがたくさんの有用成分が含まれています。そしてもう1つ大切なものとしてシトルリンがあります。

シトルリンの健康機能

シトルリンとはアミノ酸の一種で、日本の研究者によってスイカの果汁から発見されました。アミノ酸というとタンパク質の素になるものですが、このシトルリンはBCAA(分岐鎖アミノ酸)やGABA(γアミノ酪酸)と同じように、タンパク質を構成せず単独でいろいろな働きを行います。

現在ではシトルリンに関する研究が進み、次のような健康機能が報告されています。
血管拡張作用 …血流の改善
筋肉疲労の改善 …運動能力の向上
アンモニアの無毒化 …肝臓の解毒作用
抗酸化作用 …細胞の老化抑制

シトルリンの多い食材

ではここでシトルリンを多く含んでいる食材を探してみましょう。シトルリンはウリ科の植物に豊富に存在し、中でもスイカの含有量は100g中180㎎とされています(海外文献 2005年)。

他にヘチマ(57㎎)、メロン(50㎎)、冬瓜(18㎎)キュウリ(5.0~9.6㎎)、ニガウリ(2.0~16㎎)などにも含まれますが、スイカと比べるとぐっと少なくなります。また牛肉では0.88㎎とほんのわずかな量しかありません(協和発酵バイオ㈱ 社内データ)。

シトルリンの多い部位

シトルリンはウリ科植物であるスイカにたっぷり含まれているのですが、その存在量は部位によって違いがあります。熟した赤い果肉では180㎎/100gですが、皮の白い部位(156㎎)、緑色の部位(271㎎)、また種(28㎎)と報告されています(協和発酵バイオ㈱ 社内データ)。

このように廃棄部分が多いスイカにおいて、甘さはともかく機能性アミノ酸であるシトルリンは通常捨ててしまう皮や種にもたっぷり含まれていることが判ります。これらのデータを見るととてももったいない気がしてきます。


 

【体温調節とシトルリン】

これからの季節、冷やしたスイカを食べると涼しくなります。スイカは水分・糖分が豊富であり、熱中症対策にも適した果物とされています。ではここで問題です。スイカを食べると涼しく感じるのは冷蔵庫で冷やしたからでしょうか?

毛細血管と体温調節

私たちヒトやペット(イヌ、ネコ)は年中体温が一定に保たれている恒温動物です。暑い夏は体温を逃がし、寒い冬は体温を保持する仕組みがありますが、これを担当しているのが皮膚の毛細血管と汗腺です。

夏は毛細血管が拡張し血流量を増やして放熱します。また汗をかくことで体表から熱を奪い(=気化熱)体を冷やします。冬はこれとは逆で大切な熱が逃げないように毛細血管を収縮させて血流を抑えます。(冬に手足が冷たくなるのは、体温保持のために体が自ら皮膚の毛細血管を細くして血流量を減らしているためです。)

イヌの場合、私たちヒトと異なり全身で汗をかくことはありません。すなわち夏場の体温調節はもっぱら体表からの放熱に頼ることになります。このためにも毛細血管の拡張=血流量の増加を応援する対策が必要となります。では最後にシトルリンの血管拡張作用の仕組みを見ておきましょう。

シトルリンと体温の関係

シトルリンは摂取されると体内でいろいろな酵素の作用を受け、アルギニンというアミノ酸に代謝されます。アルギニンは一酸化窒素(NO)を産生すると再びシトルリンに変わります。この繰り返し回路をNOサイクルと呼びます。

NOサイクルがぐるぐる回ると一酸化窒素が次々と供給されます。そして一酸化窒素は血管を作る筋肉に作用し、これを拡張させて血流量を増やします。結果として夏は放熱により体温が下がり、冬は手足が暖かく感じます(ただし熱はじわじわと逃げていきます)。

以上より、よく冷えたスイカを食べると涼しく感じるのは単に冷たいだけでなく、豊富に含まれている機能性アミノ酸:シトルリンも関与しているといえます。

ウリ科の植物は夏が旬であり、その代表がスイカです。私たちは三角にカットして2~3切れは食べますが、ペットの場合はちょっと難しいかもしれません。そんな時は果肉部分をしぼってジュースとして与えるのも良いアイデアでしょう。

次回はスイカエキスとペットの尿路結石予防に関する研究報告お伝えしようと思います。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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