獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「朝フードと夜フード」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です
みなさんは愛犬の朝ごはんと晩ごはんのメニューを変えていますか?今回のテーマは朝フードと夜フードの注意点です。

愛犬の食事

みなさんの愛犬が朝と夜にフードを食べた後、体の中ではどんなことが起きているのでしょうか。

血糖値の動き

空腹感や満腹感といった感覚は血糖値によってコントロールされています。血糖値が低くなるとお腹が空いた、高くなるとお腹がいっぱいといった具合です。

では、イヌの食後の血糖値の動きを見てみましょう(小田民美ら 日本獣医生命科学大学 2015年)。

血糖値のおおよその基準値は100mg/dLです。フードを食べると、およそ1時間で血糖値は110mg/dLくらいまで上昇します。この時、胃の充満感と血糖値の上昇により満腹となります。

食後2時間ほど経過すると、今度は100mg/dLを少し下回るくらいまで低下して、やがて元の基準値に戻ります。その後、5~6時間で胃の中は空っぽになり空腹を感じます。

このように食事をした後、血糖値は上がってから下がり、そして6~12時間を経過して元の値に戻ります。イヌの場合、1日2回の食事ですと、このパターンが朝と夜に繰り返されていることになります。

血糖値の調節

食後に血糖値が上がるのはフード成分の炭水化物によるものです。この炭水化物は消化されるとブドウ糖になり、血液中に入り込んで血糖と呼ばれます。
ドライフードでは炭水化物は50%ほど含まれています。

体の中で最もブドウ糖を必要とするのは、筋肉や脳など多くのエネルギーを消費する臓器です。いったん血液中に入り込んだブドウ糖はこれらの臓器に供給されます。この結果、血中のブドウ糖量は減るため血糖値は下がります。

この血糖値を下げるしごとをしているのがインスリンというホルモンです。

インスリン抵抗性

インスリンと聞くと糖尿病患者の注射薬を思い浮かべます。インスリンは体の中で血糖値を下げる唯一のホルモンであり、膵臓から血液中へ分泌されます。

「インスリン抵抗性」ということばがあります。これはインスリンが分泌されていてもその効果が低く、血糖値が下がりにくい状態をいいます。(体がインスリンの作用に抵抗しているという意味です)

糖尿病とはこのインスリン抵抗性が高く、食後だけでなく常に高い血糖値が続いている状態をいいます。このインスリンの効き目が悪くなる大きな原因の1つが肥満です。

昼間と夜中の違い

次は朝フードを食べた後と、夜フードを食べた後ではからだの反応が違うという話をしましょう。

血糖量とインスリン量

先ほどの小田らは、健康なイヌ4頭に1日2回(朝7:00と夜7:00)の食事を与えて、その後の血液検査を行っています(2015年)。

朝フードを食べた後12時間(昼間)と、夜フードを食べた後12時間(夜中)の血糖の合計量はおよそ1,250mg/dLで大きな差はありませんでした。

これに対してインスリンの分泌合計量は、夜中の方がわずかですが多いという結果でした(昼間12.0ng/mL、夜中12.5ng/mL)。

これは昼間と同じ血糖量に調節するために、夜中は少し多めにインスリンを分泌しているということです。すなわち、健康なイヌの体の中において、夜中はややインスリン抵抗性が高くなっているということを意味しています。

脂肪燃焼量と運動量

次の血液検査の比較データは脂肪の燃焼量についてです。運動を行うと体脂肪が燃焼されますが、その結果NEFA(遊離脂肪酸)という物質が産生されます。NEFAの量が多いということは、脂肪が燃焼されたということになります。

12時間のNEFAの合計量は昼間が約4,000μEq/L、夜中は約3,600μEq/Lでした。夜中は体脂肪があまり燃焼されていないということです。この理由は簡単なことで、夜中の運動量(歩数)は昼間の1/3以下であるためです。

昼間は散歩の他に家の中を歩き回るため、夜中よりも多くのエネルギーを必要とします。愛犬に同じ内容・同じ量のフードを与えていても、エネルギーとして昼間は不足し、夜中は余っているということになります。

ヒトの場合、夕食よりも朝食をしっかり食べることが大切といわれていますが、イヌでも同じということです。

朝と夜のフードの注意点

以上のデータから、健康なイヌへのフードの注意点をまとめると次のようになります。

朝フード

朝フードのメニューは特に注意をする必要はありません。オーナーのみなさんのライフスタイルによってあまり時間がないのであれば、いつものドライフードを与えるのも良しです。

一つ注意すべき点は食後の運動です。フード摂取後は胃の中に食べた物が入っていて、さらに水も飲んでいます。このため、食事直後の運動は胃捻転のリスクが高く危険です。

これに食後の血糖値の動きを併せて考えてみましょう。食後2時間ほど休ませてあげると、上がって下がった血糖値が落ち着いてくる頃です。これくらいの休憩時間を取れば、胃にも血糖値にも食後の運動の負担は軽いと考えられます。

夜フード

夜のフードメニューには少し注意が必要です。夜中は昼間に比べて生理的にインスリンの効き目がやや弱くなっています(=インスリン抵抗性)。加えて、昼間より運動量が少ないため、エネルギーの消費量も少なくなっています。

消費しきれないエネルギーはイヌの体に少しずつたまってゆきます。維持期(1~7歳)の場合、基礎代謝が高いため夜中でもある程度のエネルギー消費が期待されます。

しかし、7歳を超えるいわゆる高齢犬では過剰なエネルギーは脂肪としてたまってゆきます。じわりじわりと肥満が始まります。

愛犬の年齢に関係なく、夜フードでは脂肪分を抑えたものが適していますが、体の元をつくるタンパク質はしっかり摂ることが大切です。

夜フードの後はベースとして肥満のリスクが高く、このことが若く健康なイヌにおいても糖尿病の背景になっていることを覚えておいて下さい。

現在、市販のペットフードには年齢別や健康状態別などのラインナップがあります。今回のテーマから考えると、良質なタンパク質をしっかり配合した朝フード、脂肪分を抑え食物繊維を配合した夜フード、といった新しいカテゴリーのフードの開発が期待されます。

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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