獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「アスタキサンチンで筋萎縮予防」

夏場に外出を控えて運動不足になると肥満を招くという話をしています。肥満とは体脂肪の増加を指しますが、ケガや老化によって運動量が減った場合は筋肉量が減少します。今回は筋肉の衰えとアスタキサンチンの関係を探ります。

【廃用性筋萎縮】

「廃用性筋萎縮」という言葉があります。これは使用しないことを原因とする(廃用性)筋肉がしぼんだ状態(筋萎縮)という意味です。骨と同様に筋肉も負荷をかけないと衰えてしまいます。

運動負荷と筋肉量

病気やケガでベッド生活を送るとしばらくの間、脚に力が入らず上手く歩けないことがあります。これが廃用性筋萎縮ですが、実際にはどれくらい筋肉は減少しているのでしょうか。モルモットを用いた次のような試験結果があります(山崎俊明ら 金沢大学 1993年)。

●被験動物 モルモット
●グループ 
  対照群 …自由に運動可能
  非負荷群 …片方の脚に体重がかからないように処置
    A群:常時、運動ができない状態
    B群:1日1回、1時間の運動を実施
    C群:1日2回、1時間の運動を実施 

この条件で2週間観察し、脚のふくらはぎ部分の筋肉重量を測定したところ、体重負荷がかからないグループA~Cは対照群の約1/2~1/3にまで減少していました。また毎日少しでも運動すると筋肉の低減量は低く抑えられていました。このように脚の廃用性筋萎縮を緩和するには、体重の負荷をかけた運動が大切であることが判ります。

筋萎縮と酸化ストレス

使用しないと衰えるという廃用性筋萎縮の背景には、「不活動」と「老化」の2つがあります。不活動とは骨・関節の疾患、ケガ・手術により包帯やギプスで固定され、運動したくてもできない状態のことです。また老化によるものは加齢で運動量が減少したり、また寝たきり状態になったものです。

腕や脚など体を動かす筋肉は骨に付着しているため骨格筋といいます。この骨格筋は繊維状の筋肉が何本も束になった構造(筋線維)をしており、筋萎縮とはこの1本1本の筋線維が細くなり、骨格筋全体的も細くしぼんだ状態になることです。

不活動によるもの、老化によるもの、共に筋線維にダメージを与え細くする犯人は活性酸素による酸化ストレスです。これより体内に抗酸化物質を取り入れることで廃用性筋萎縮の対策が可能ではないかと考えられています。

【不活動による筋萎縮】

不活動による筋萎縮として骨折治療中のギプス固定を想定してみましょう。骨がしっかり修復するまでの間、周囲の骨格筋を動かすことはできません。固定されることにより筋肉は酸化ストレスを受けます。

ギプス固定

少々かわいそうですがラットを3グループに分けて、対照群、試験群(アスタキサンチン0.04%摂取、0.2%摂取)とし、全頭の後肢片方をギプス固定して10日間観察した試験報告があります(杉浦崇夫ら 山口大学 2005年)。

左右の脚の筋肉重量を測定すると、当然ながらギプス固定した方の筋肉量は減少していました。しかし減少率は対照群よりも試験群の方が低く抑えられていました。抗酸化物質であるアスタキサンチンの摂取は後肢筋肉の廃用性萎縮を軽度に抑えることが確認されました。

酸化ストレス度

アスタキサンチンを摂取していたラットは筋萎縮が軽度でした。これはギプス固定をすると筋肉に活性酸素による酸化ストレスが発生するためと考えられます。これを受けて実験的にラットに体重負荷がかからないように処置して、脚筋肉へのアスタキサンチンの作用を調べた試験結果があります(金指美帆ら 神戸大学 2012年)。

●被験動物 ラット
●グループ
  対照群 …自由に運動可能
    アスタキサンチン非投与群、投与群
  非負荷群 …後肢に体重がかからないように処置
    アスタキサンチン非投与群、投与群
●アスタキサンチン投与
  アスタキサンチン(50㎎/㎏)を1日2回投与
●測定項目
  後肢筋肉の酸化ストレス度、毛細血管本数

このような条件で7日間飼育し、4群のラットの筋肉の酸化ストレス度を測定しました。対照群のアスタキサンチン非投与ラットのストレス度を100として他群と比較したところ、負荷運動がないと高く、アスタキサンチン投与では低くなるという結果になりました。

体重をかける運動を行わないと脚筋肉は活性酸素によるダメージを受け、抗酸化物質であるアスタキサンチンはこの酸化ストレスを抑えることで筋萎縮を軽減することが判ります。

アスタキサンチンによる筋修復

アスタキサンチンの働きは活性酸素を叩くだけではありません。上記の試験の続きで4群のラット筋肉を顕微鏡で観察し、筋線維に接する毛細血管の本数を測定しました。すると運動を行わないと血管本数は少なく、逆にアスタキサンチン投与群では多いことが判りました。

毛細血管は筋線維に酸素や栄養分を送り込む役割をもっています。血管本数の増加とは酸化ストレスでダメージを受けた筋線維が元の状態に戻るための準備が整っていることを意味しています。

以上の成績から不活動による廃用性筋萎縮では活性酸素が増加しており、アスタキサンチンは強力な抗酸化力でこれを叩きます。さらに減少していた毛細血管本数を増加させ、萎縮した筋線維の修復を応援する働きがあると考えられます。

【老化による筋萎縮】

ヒトと同様、ペットも寿命が延び高齢化が進んでいます。老化に伴い体全体の運動量が減少したり、骨折・認知機能の低下により寝たきり状態となり筋萎縮を招くことになります。これが加齢性筋萎縮です。

加齢性筋萎縮

加齢に伴い筋肉量や筋機能が低下するのが加齢性筋萎縮ですが、実験動物を用いて1年間という長期に渡る試験を行ったデータがあります(芝口 翼ら 山口大学 2008年)。

ラットを対照群(通常のエサ)と試験群(アスタキサンチン配合のエサ)に分け、1年間飼育して後肢ふくらはぎ部分の筋肉重量を比較しました。すると対照群(184.1㎎)に対して試験群(227.4㎎)とアスタキサンチンを摂取していたグループの方が約24%多いという結果でした。

加齢性の筋萎縮には筋タンパク質を分解する酵素の作用が関係しています。これより複数種類ある分解酵素の働きを調べたところ、その中の1つの酵素活性が試験群において約26%も低く抑えられていました。

このように老化が進む動物において、アスタキサンチンは筋肉のタンパク質分解を抑制することで加齢性筋萎縮を軽減緩和する作用があることが確認できました。ではどうしてアスタキサンチンは筋萎縮防止に有用なのでしょうか。その理由は細胞においての抗酸化のしくみにあります。

アスタキサンチンの抗酸化能力

抗酸化物質にはさまざまな種類があります。その中でアスタキサンはβカロテンの40倍、ビタミンEの1,000倍などといわれていますが、これは細胞膜のどの部分で活性酸素と闘うか(抗酸化担当エリア)の違いによるものです。

抗酸化物質の代表としてビタミンC、E、βカロテンとアスタキサンの作用部位を確認しましょう。まずビタミンEは細胞膜の少し内側に位置し、自分が酸化されることで活性酸素を抑えます。ビタミンCは細胞膜の外側から酸化されたビタミンEを元の状態に修復します。またβカロテンは細胞膜の中心部に存在し活動します。

対してアスタキサンチンは細胞膜の内側から中心部までの広い守備範囲において活性酸素と闘います。これは肝臓などの臓器の細胞でも今回テーマとした筋線維でも同様です。アスタキサンチンは強力に活性酸素の害から動物の細胞をガードしてくれています。

若く健康なペットが思いっきり運動する場合、ケガや老化により運動ができない場合、どちらの状態においても筋肉では活性酸素による酸化ストレスが発生します。サケなどの身近な食材に含まれるアスタキサンチンは強力に活性酸素を叩く力をもっています。

運動パフォーマンスの向上から廃用性筋萎縮のケアまで、「海のカロテン」アスタキサンチンはペットの年齢に関係なく幅広くその健康維持に貢献する成分です。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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