獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「第2のミルク豆乳の活用」

只今、牛乳に似た白い飲料である植物性ミルクについてお知らせをしています。植物性ミルクにもいろいろな種類がありますが、その中で一番飲まれているのが豆乳です。

【豆乳の人気】

第2のミルクと呼ばれている豆乳は、日本はもちろん世界においても高い普及率をもっています。

豆乳の生産量

日本豆乳協会の報告によると、30年前は2~3万キロリットルであった飲用豆乳の生産量は、10年後には約20万キロリットル、そしてさらに10年後の令和3年では42万キロリットルにもなっています。

このように豆乳は直近10年で生産量がものすごく伸びた植物性ミルクです。これは昔から豆乳=豆腐の原料として馴染みがあったことに加え、昨今の健康志向の高まりが需要を押し上げたためと思われます。

世界の豆乳普及率

では海外において豆乳はどれくらいの割合で飲まれているのでしょうか。alic(独立行政法人 農畜産業振興機構)による調査では、世界8か国で豆乳を飲んだことがある人の割合は、アジアの国々では70~80%、欧米では30~40%です。

この中で日本の普及率は49%で、およそ2人に1人が豆乳を飲んだことがあるという結果です。前回のライスミルクと比べて、豆乳は世界的にも認知度・飲用率共に高い食材であるといえます。

【飲用豆乳】

スーパーで豆乳製品を探してみると、調整豆乳とか豆乳飲料とか似たようなものを見つけます。これらはいったい何が違うのでしょうか?

いろいろな飲用豆乳

農林水産省から出されている日本農林規格では飲用豆乳を「豆乳」「調整豆乳」「豆乳飲料」の3つに分けています。大豆タンパク質が何%以上含まれるなどの細かい規定は省略しますが、これら3種類の違いは大豆の他に何が使われているかという点です。

まず豆乳とは、大豆のみで他には何も添加されていないものをいいます。調整豆乳には、これに食用植物油脂、食品添加物(香料など)、調味料(砂糖、蜂蜜、食塩など)が加えられています。そして豆乳飲料は、この調整豆乳にさらに風味原料(果汁、コーヒー、牛乳、抹茶など)が添加されたものです。

豆乳オンリーというのは少々豆臭さを感じるため、香料や砂糖、果汁などで味付けをして飲みやすくしています。なお、現在これら3種類の流通割合はおよそ豆乳(30%)、調整豆乳(50%)、豆乳飲料(20%)となっています。

前回紹介したアンケートでは、植物性ミルクの気になる点として「美味しくない(25.9%)」「香り・風味が良くない(9.2%)」「砂糖や食品添加物入りの商品がある(8.8%)」という回答がありました。豆乳購入時には表示をよく確認して、みなさんの好みに合ったものを選んで下さい。

豆腐用と飲用の違い

ミルクのように飲む豆乳を紹介していますが、実は飲用豆乳と豆腐をつくる時の豆乳とでは製造方法が少々異なります。飲用豆乳の場合には、敬遠される豆臭さを消す工夫がされています。

まず大豆を水につけて十分に吸水させ、軟らかくなった大豆をゆっくりとすりつぶします。ここまでは同じですが豆腐製造では常温で行い、飲用豆乳ではこの時加熱します。

大豆をすりつぶすと中に含まれる脂肪酸とこれを分解する酵素が反応してアルデヒドというものができ、これが豆臭の原因物質になります。飲用豆乳の場合はこの反応をストップさせるために、熱を加えて酵素を失活させる工夫がされています。

次の工程ではペースト状になった大豆を加熱後にしぼり、液状の豆乳とおからに分けます。ここでできた豆乳に凝固剤を加え固めたものが豆腐、最後に加熱殺菌し無菌的にパック詰めしたものが飲用豆乳になります。

【新しい豆乳の活用法】

豆乳の栄養成分は大豆と同じですが、液状にすることで更なる健康機能を発揮します。豆乳をベースにした新しい健康食品の開発を目指している研究報告を見てみましょう。

ダイエット:DHAとの併用

女子栄養大学の上西一弘らは、豆乳とDHA(ドコサヘキサエン酸)との相乗作用という興味深い研究を行っています(2002年)。試験設定は次のとおりです。

●被験者 健康な女子大学生(18~22歳)
●グループ 被験品を1日200ml×6週間摂取
試験群(17人)…豆乳200ml+DHA1,000㎎
対照群(17人)…豆乳200ml+コーン油
●測定項目
体重、体脂肪、エネルギー消費量

飲用開始6週後では、両グループとも体重や徐脂肪体重の減少が確認されましたが、その減少率は豆乳のみの対照群よりも豆乳にDHAを加えた試験群の方が高い値を示していました。また体脂肪に関しては、試験群のみ減少が確認されました。

十分な食事を摂って体重が減少しているということは、食べたものが体内でしっかり燃焼されているということになります。そこで安静時のエネルギー消費量を測定したところ、対照群では6週後で消費量の増加を示しました。対して試験群の方は3週目の早い時期から増加が見られ、6週後では対照群よりも高い消費量が確認されました。

以上より豆乳自体にも体重増加を抑えるはたらきがありますが、これにDHAが添加されると脂肪の燃焼作用が加わります。豆乳とDHAは相性が良いようで、肥満対策において良好な相乗作用を発揮することが判りました。

抗酸化活性:豆乳ヨーグルト

近頃ニュースでプラントベースフード(植物性材料を用いた食品)や牛乳代替食品の話題を耳にします。この背景には世界的な動物性タンパク質の需要増加があり、これを代替肉など大豆で作った食品に置き換えようとする考えがあります。同じように乳製品の替わりとして豆乳を使ったヨーグルトがあります。

東海大学の木下英樹らは豆乳と食品由来の乳酸菌を用いてヨーグルトを作製し、その健康機能に関する研究報告を行っています(2016年)。まず漬物やキムチ、米などから分離した乳酸菌26株について調べたところ、豆乳が固まらない10株と固めることができる16株の2つのグループに分かれました。

そして両グループの豆乳のpHを測定した結果、凝固(-)群が6.08であったのに対し、凝固(+)群は4.88とより強い酸性を示していました。これよりヨーグルト状に豆乳を固めるには、乳酸菌が産生する乳酸の量が大切であることが判りました。

みなさんは粘り気がとても強いカスピ海ヨーグルトをご存知でしょうか?あの粘りやとろみの成分は乳酸菌が作り出すEPS(菌体外多糖)というものです。近年このEPSには抗腫瘍作用、抗酸化活性、免疫賦活作用などがあることが判り注目を集めています。

次に木下らはいろいろな乳酸菌株で豆乳ヨーグルトを作製し、その中に含まれるEPS(菌体外多糖)の量を比較しました。するとこの場合も株によってEPS産生量とこれに由来する抗酸化活性が異なる結果になりました。

以上の成績から、牛乳の替わりに豆乳と適切な乳酸菌株の組み合わせにより酸味のあるヨーグルトをつくれることが判り、さらには抗酸化活性などの健康機能をもった豆乳ヨーグルト商品の開発の可能性も確認されました。

豆乳は温めて表面を膜状にすると湯葉、凝固剤で固めると豆腐になります。さらに豆腐の水分を取って揚げると油揚げ、また凍らせて乾燥させると凍り豆腐(高野豆腐)になります。このように豆乳はそのまま飲む以外にも幅広く応用が利く食材です。

これからは牛乳の代替食材という意味合いでも豆乳を活用した健康機能食品がどんどん開発されてゆくと思われます。私たちの食生活はもちろん、ペットの食事・おやつの材料としても豆乳を活用してゆきたいものです。

(以上)

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「畑の肉」といえば大豆ですが、豆腐タンパク質をはじめ食物繊維や多種のミネラル・リノール酸が含まれていて優良な食材です。


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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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