獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「愛犬の咬傷事故にご注意」


なんとか新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきた感があります。この3年間、外へ出ることを控えていたのはオーナーの皆さんだけでなくペットも同じでした。思いっきり外の空気を吸いたいところですが、外出機会が増えるこれから注意しなければいけないのが愛犬による咬傷事故です。

【咬傷事故の昔と今】

ペットを含めた動物による咬傷事故の発生報告は環境省が管理しています。統計は1974年(昭和49年度)からありますが、ここで30年前と最新のイヌによる咬傷事故データを比較してみようと思います。

年間報告件数

およそ30年前の1990年(平成2年度)から10年ごとの報告件数を拾ってみると次のようになっています。

・1990年(9,618件)
・2000年(6,576件)
・2010年(4,383件)
・2020年(4,602件)

イヌの飼育頭数を1990年(1,000万頭以上)、2020年(約730万頭)とすると300万頭ほど減っていますが、これを考慮してもこの30年間で咬傷事故の報告件数は半分にまで減少していることが判ります。

被害者と発生時の状況

次に事故の被害者と事故発生時の状況を比較しましょう。昔も今もイヌに咬まれているおよそ90%はオーナー家族以外の人たちです。被害者の大部分は面識があまりないオーナーの友人や訪問者、またはまったくの他人ということです。

では家族以外の他人が咬まれるのはどういう状況なのでしょうか?予想される場面には「触れようとして咬まれた」とか「訪問者が玄関先で咬まれた」などがありますが、実際に最も多いのは「通行中」でした。

道路や公園などを歩いている時にイヌに咬まれるという割合は30年前で46%、現在でも49%です。すなわち昔も今も変わらずイヌによる咬傷事故では、被害者のおよそ半分は通行中の他人ということになります。

【咬傷事故発生時の対応】

みなさんの愛犬が咬傷事故を起こした場合、オーナーとして行わなければならないことが法律で定められています。もしもの時に備えて知っておきましょう。

行うべき3つの対応

ペットの咬傷事故には対人、対物、対動物の3種類がありますが、ここでは対人事故を想定して紹介します。まず1つ目に行うことは「被害者の救急処置」です。ケガの程度に関係なく、必ず医療機関で診察・治療を行ってもらいます。

どんなにかわいいペットでも口の中には細菌やウイルスなどをもっています。傷口からこれらの微生物が侵入することで起こる感染症に対して、早期に処置をする必要があります。

2つ目は事故発生後24時間以内に保健所(地域によっては動物管理センターなど)に届出を行います。「事故発生届出書」という書類を提出しますが、ここで同時に事故を起こした愛犬が狂犬病に感染していないことの証明書類(動物病院で発行されます)の提出が求められます。

3つ目は狂犬病の鑑定です。事故発生から48時間以内に動物病院に行き検査を受けます。この時、狂犬病ワクチンの「注射済票」を持参すると事務処理がスムーズに行われます。狂犬病陰性の結果が出た場合、「検診証明書」を受け取り再度保健所に行きこれを提出します。

なお、咬傷事故を起こしてもオーナーが判明しているイヌであれば処分されることはありません。引き続き一緒に生活することができますのでご安心下さい。被害者へのケガの賠償や行政機関への届出などのオーナーとしての誠実な対応が第一です。

事故が多い犬種

どの犬種に咬傷事故が多いのか?これは愛犬オーナーとしては少々気になるところです。損害賠償責任が生じた事故の統計としてアニコム家庭どうぶつ白書(2012年)が報告しているところでは、対人、対物、対動物全体として発生件数が多かったのは柴犬、コーギー、ミニチュアダックスフンドの3種でした。

以前このコラムで愛犬の気質と性格について紹介したとおり、柴犬やミニチュアダックスフンドは興奮性が高い犬種といえます。同時に統計的に上記3種は飼育頭数が多いことも背景にあります。やはり咬傷事故防止を含めて、幼犬のうちにしつけを学ぶパピートレーニングは重要であるといえます。

【咬傷事故の発生背景】

先ほどの環境省の統計によると、昔も今も対人事故の被害者は通行中の他人(オーナー家族以外の人)がその大部分でした。この点をもう少し詳しく見てみましょう。

事故の発生場所

対人事故の発生場所は路上(45.7%)が全体の半分近くを占めています。次いで自宅(21.6%)が多く、公園(9.4%)、玄関(8.1%)と続きます(アニコム家庭どうぶつ白書 2012年)。路上と公園を1つと見ると、愛犬を公園に散歩に連れていくという場面で多くの咬傷事故が発生しているといえます。

また玄関での事故としては、チャイムの音に驚き興奮し、顔を知らない訪問者に咬みつくという事例があります。新型コロナの蔓延が追い風になり、この数年は宅配を利用する機会が増えています。これからは玄関先での宅配業者への咬傷事故増加が懸念されます。

首輪・リードの不良

自宅外の事故現場として路上や公園が多いということは、リードをしっかり付けていなかった/リードが外れてしまったなどが原因と考えられます。この首輪・リードが直接関係するものの状況を詳しく調べてみると、「首輪が抜けた・リードが外れてしまった」と「リードをしていなかった」がほぼ同じくらいで、合わせると全体のおよそ85%にもなります。

リードをしていなかったというものには、公園や広場で自由に遊ばせていたというものがありますが、これに加えてバッグやカートに入れての散歩という事例も少なくありません。

小型犬であれば女性オーナーでも抱っこができ、また2~3頭をカートに入れて散歩されている方をよく見かけます。このような場合、何かに驚いて愛犬が飛び出し事故発生につながると考えられます。また、自動車にひかれるなどの交通事故の点からも要注意です。

散歩準備と首輪・リードの点検

愛犬の散歩・外出準備といえば、トイレの後始末セット、飲み水、おやつなどがあります。この時、みなさんは首輪やリードの点検を行っていますか?オーナーの手を離れて保護された迷子犬の装着物についての調査報告があります(福島県動物愛護センター 令和5年)。

これによると捕獲犬176頭の内、首輪がないものが約33%(58頭)もいました。近頃野犬はほとんど見かけませんので、この58頭は首輪が抜けて迷子になったものと考えられます。他にも首輪+リード(鎖、ワイヤー)の状態の迷子犬は全体の約24%でした。

以上の結果から、愛犬がオーナーの手元を離れないための防止策が次のようにまとめられています。

❶首輪の点検
  …首との隙間は指2本分くらいにする。3本入るほどの緩みがあると抜けてしまうことがある。

❷金具の点検
  …首輪とロープ・鎖をつないでいる金具(ナスカン)が破損していないか確認する。古いものではレバーが閉じない状態になっていたり、根元にぐらつきが見られるものがある。

❸ロープ・ワイヤーの点検
  …長い間同じロープやワイヤーを使っていると地面と擦れ、急に引っ張られた時に切れることがある。特に大型犬の場合は力が強いため断裂するリスクが高い。

報告書では迷子犬防止として外出前の首輪やリードの点検実施、そして定期的な新品との交換を薦めています。同時にこれらの対策は散歩中に愛犬がみなさんの手元を離れてしまって発生する咬傷事故の防止にもつながります。

新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられました。不思議に開放感が感じられ、愛犬との散歩も楽しい気分になってきました。また控えていたペットを連れての旅行/ペットツーリズムも復活してきた様子です。

家の中にこもっているとヒトもペットもストレスがたまります。素敵なデザインの新しい首輪・リードに買い替えて、ぜひペットと一緒に安全な外出を楽しんで下さい。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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