犬種

バーニーズ・マウンテン・ドッグのこと、もっと知りたい!- 人気の犬種シリーズ -

スイス原産の犬といって思い浮かぶのは、アニメ『アルプスの少女ハイジ』に登場するヨーゼフ。
その犬種はセントバーナードです。
雪深いアルプスの山での救助犬として今も活躍を続けていますが、今回ご紹介する「マウンテン・ドッグ」もスイス原産の犬です。
アルプスの山村で、荷車を引く運搬作業をとおして人々の暮らしを大いに助けてきました。
このことからもバーニーズ・マウンテン・ドッグは「引く力」が非常に強いことでも知られています。
人のために一生けん命に働くことが大好きな「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」。

さあ、その魅力を、いっしょに見ていくことにしましょう。

バーニーズ・マウンテン・ドッグってどんな犬


 

バーニーズ・マウンテン・ドッグ誕生ストーリー

バーニーズ・マウンテン・ドッグは通称「バーニーズ」と呼ばれています。(以下バーニーズと記載)
この犬種は、今から2000年ほど前にマスティフ系とスイス土着の牧畜犬との間に誕生した歴史の古い犬です。
今でこそ犬は家族、パートナーとして飼育されていますが、その昔は人間の生活を助ける大切な働き手とされていました。
スイス山岳地帯での牛追い犬としての仕事や、山道の運搬に不向きな牛や馬の代わりに荷車を引いて荷物を運ぶ仕事など、起伏の多いアルプスの山道でバーニーズのような使役犬がその仕事を担っていたのです。
雪深い道を進んでいく頼もしい姿は現在でも見られます。

そんなスイスには、「スイス・マウンテン・ドッグ」と呼ばれる4種類の犬たちがいます。
その中の1種類がバーニーズこと、「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」なのです。
スイス・マウンテン・ドッグ4種の犬たち(グレーター・スイス・マウンテンドッグ/エントレブッハー・マウンテンドッグ/アッペンツェラー・キャトル・ドッグ/バーニーズ)は、それぞれ大きさや被毛のタイプは異なっていますが、色は白、黒、茶色のトライカラーという点での共通がみられます。

ところが、アルプスで活躍していたバーニーズにも陰りが見え始めたのは、19世紀の産業革命後のことです。
自動車の発明によって輸送手段が急激に発達していくと、バーニーズの仕事も激減していきました。
そして、ついには絶滅の危機にまでさらされたのです。
そこで、そのような事態を危惧したスイスの愛犬家フランツ・シェルテンライブとアルベルト・ハイムらが立ち上がります。
スイスの山岳地帯でわずかに生き残っていた純粋なバーニーズを発見し交配を試みた結果、10年、20年が過ぎる頃には、100頭を超えるまでに増やすことができたのです。
そして、堂々とドッグショーに出陳されるまでになりました。
当時は、「デュール・ペッヘラー」という犬種名で呼ばれていましたが、1910年のドッグショーを機に「スイスの山の犬」という誇り高い名前「ベルナー・ゼネン・フント」と紹介をされ、それを英語に訳して「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」と呼ぶようになり、世界中にその名を轟かせることになったのです。

とくにアメリカではバーニーズのその温厚で気立ての良さが人気となり、今では広く家庭犬、パートナー犬として愛されています。
日本でバーニーズが登録されたのは今から30年余り前です。
JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)の「犬種別犬籍登録頭数」を見ると、2018年は132犬種中27位、1,279頭の登録数が公表されています。

外見上の特徴

体格

  ・頑丈な骨格
  ・発達した筋肉
  ・すべてのバランスがよくとれている
  ・垂れ尾

  ・垂れ耳
  ・頭部に左右対称の純白のマーキング
  ・目の上にタン
  

被毛 ― 色

  ・黒、白、タンのトライカラーのみ
   黒はジェット・ブラックと表現される漆黒
   足先や尾の先端が白

被毛 ― 長さ

  ・ダブルコート(上毛と下毛をもつ)
  ・長毛
  ・直毛もしくはややゆるいウェーブをもつ
  ・豊かな被毛の量

性格

飼い主さんの喜ぶ顔を見るとますます張り切ってしまう点や、大きな体でどっしりと構えて包容力のある性格のバーニーズですが、幼犬の頃は活発でなかなかのやんちゃぶりを発揮しているようです。
しかし、成長とともに落ち着いた聞き分けのよい性格形成ができる犬種ですから、幼犬期には根気よくしっかりとしつけたいですね。

  ・落ち着いている
  ・注意深い
  ・飼い主に対しても他人に対しても穏やかで温和
  ・性格にムラがない
  ・従順
  ・無駄吠えが少ない
  ・攻撃性がない

かかりやすい病気と対策

ドッグショーに出陳される堂々とした犬たちの姿に見惚れる人も多いことでしょう。
より素晴らしい犬種を生み出すために純血種同士の交配が多く行われてきました。
とくに、バーニーズは絶滅の危機を乗り越えてきた犬種だけに、頭数を増やすためには近親交配もあり得たため、遺伝的疾患の素因を引き継いだことは否めません。
できれば、そのような疾患を先天的に背負うことなく元気に一生を過ごしてもらいたいと願うのは、飼い主さんをはじめ私たちの強い思いでもあります。
しかし、残念なことに発症して初めて、重篤な病気だとわかることも多いのです。

また、弱い遺伝因子を持つことなく誕生したとしても、飼育方法、住環境、食事などの影響により後天的に発症することもあります。
下記に挙げた病気はバーニーズ特有の病気ではないのですが、症例として多いということを知っておきましょう。

股関節形成不全

大型犬などに多い病気の部位は関節などの骨です。
犬の祖先はもともとオオカミですが、その長い歴史の間に人が意図的に犬種を作り出してきました。
そのため、純血種の犬にはさまざまな遺伝性疾患が表れるという負の結果を生み出したのです。
その遺伝性疾患のひとつが、股関節形成不全であることは否めません。
この病気は、「股関節寛骨臼(こかんせつかんこつきゅう)の発育不全・変形、大腿骨頭(だいたいこっとう)の変形・偏平化による股関節の弛緩」のことで、骨盤(こつばん)と大腿骨(だいたいこつ)を結合している靭帯(じんたい)と関節包が伸びて脱臼しやすい状態を言います。
 
●症状
  ・不自然な歩き方(腰を左右に揺り動かし歩く)別名モンローウォーク歩行と呼ばれる
  ・散歩を嫌がる
  ・足を引きずる
  ・横座りをする
  ・両方の後ろ足を同時に動かす(うさぎ跳び走行)
  ・痛み

●予防・対処方法
  ・成長が著しい時期に発症しやすい
  ・体重増加が足腰への負担を招くため、肥満にならないように注意
  ・痛みが強いときは、運動を控え安静にする
  ・進行が見られる場合は、鎮痛剤や抗炎症剤などの内科治療を行う
  ・重症化した場合は、外科的治療で処理を行う

組織球腫(皮膚腫瘍)

組織球種とは、イボのような形で表れ成長するガンの一種です。
他犬種にも見られますが、バーニーズの場合には常染色体劣性遺伝疾患であることが特徴です。
発生する多くは、全身性組織球腫あるいは悪性組織球腫のどちらかです。
完治するのは難しい病気ですが、現在では抗がん剤治療の効果がみられるようになり、適応すれば長期の延命の望みがあります。

●症状
  ・足を引きずるように歩く
  ・咳が長引く
  ・腫瘍の有無
  ・関節の腫れ
 
●予防・対処方法
  ・早期発見
  ・抗がん剤治療
  ・抗がん剤の使用以外では、痛み止め、咳止めなどを使う緩和治療など

胃拡張・胃捻転

突然、腹部に空気やガスが溜まり膨張して起きる病気です。
本来、空気が胃の中で膨張したとしても胃の位置は変わりませんが、捻転を起こすと膨張した胃が縦方向や横方向に捻じれてしまいます。
胃の周りにある血管も捻じれた状態になるため、心臓などの臓器に影響を与えることになります。
はっきりとした原因はわかってはいませんが、一節には急性胃拡張を起こした後に胃捻転が起こるといわれています。
その急性胃拡張を起こす原因といわれているのが、早食いや食べすぎ、異物の誤飲、激しい運動後の呼吸や咳による過剰な空気の吸い込みなどが挙げられています。

●症状
  ・そわそわしだす
  ・お腹が膨れる
  ・吐きそうにえづく
  ・多量のよだれ
  ・ぐったりして動かない
  ・胃が捻じれる
  ・食堂が圧迫され塞がり胃の中の空気やガスをゲップなどで出せなくなる
  ・膨れたお腹によって血管が圧迫を受け血流が悪くなり、胃の壊死が起こる
  ・ショック状態

●予防・対処方法
  ・早食いや早飲みにならないように1回の食事を小分けにするなど食事のコントロールをする
  ・水を与えるときは、たくさんの量を一度にガブ飲みさせない
  ・食後の激しい運動は避ける(できれば散歩は食事の前に済ませる)
  ・重症化する場合が多いので、様子がおかしいと気づいたらすぐさま診察を受ける
  ・胃捻転を起こした場合は、手術により捻じれた胃を元に戻す
  ・再発を避けるためにも手術で胃を固定させる

飼育のワンポイント

お手入れ

【被毛】
長毛犬のダブルコートを持つ犬種といえば、抜け毛が多いことや被毛に汚れが付着しやすいことが挙げられます。
ブラッシングは被毛の美しさを保つためだけではなく、皮膚病やアレルギー、ノミやダニなどの予防にも役立ちます。
また、皮膚に適度な刺激を与えることは、血行促進や新陳代謝にも良いです。
  ・ダブルコートの長毛犬は、毛玉になりやすいためブラッシングをマメに行う
  ・換毛期は特に抜け毛が多いので、ブラッシングを欠かさないようにする
 
【耳】
耳は油断すると耳垢が溜まってしまい、そのために細菌や耳疥癬の感染を生じ外耳炎を起こす原因になります。
外耳炎が疑われるような場合は、耳の洗浄や内服液、外用薬(点耳薬)などを病院で処方してもらいましょう。
臭い、耳の周りの汚れ、耳の辺りを痒がり頻繁に掻くような場合は要注意です。
  ・垂れ耳は通気性が悪いため、耳を持ち上げて丁寧に耳掃除する
  ・シャンプー後は耳の周りの毛の水分をよく拭き取り、耳の中を乾燥させて清潔に保つ
 
【その他】
常に体を清潔に保つことが健康維持に役立ちます。
汚れをそのままにしておかないで、気づいたらすぐに対処してあげましょう。
  ・よだれで口の周りが汚れやすいので拭き取る
  ・目の周りが目ヤニや涙で汚れたり濡れたりしたら、柔らかなコットンやウェットティッシュなどで拭き取る

住環境や戸外に潜む危険

【関節に負担をかけない環境づくり】
先の「かかりやすい病気」の項で記していますが、股関節形成不全にならないためには、やはり足に負担を掛けないことが大切です。
フローリングなどの滑る素材の床材は足腰に負担をかけてしまうため、骨を変形させないよう滑り止めの床ワックス使用やジョイント式のタイルカーペットを敷くなど生活環境の見直しが必要です。
足の筋肉がつくような運動や食事を心がけ、体重増で足に負担がかからないように体重管理をしましょう。

【快適な環境づくり】
●大型犬のバーニーズは、住環境をしっかりと整えてあげることが大切ですね。
最近では大型犬でも室内飼いするご家庭が多いですが、部屋の中はできる限り物を足元や床に置かないで、広々としたスペースを取れるように整理整頓しておきましょう。

●ビニール系のものを丸呑みしたという実例があります。
誤飲を避けるためにもバーニーズの手の届くところに、口に入れそうな食べものや危険なものは置かないようにしましょう。

●寒さには強い反面、暑さには非常に弱い犬種ですから、できれば室温調整ができるようにエアコンの使用をお勧めします。
特に留守番をさせる場合、窓を閉め切ったままにすると室内の温度がどんどん上昇して熱中症になる危険性がありますから、クーラーを使用し室内を涼しく保ってあげましょう。
また、ジェル状のマットなどを敷いた上で体を休めると、体感温度を低く感じられます。
犬の体温はほぼ38℃から39℃くらいですから、室温を28の省エネ温度に設定してお部屋を冷やしておくと、ジェル状のマットも28℃の涼しさを保ってくれて、愛犬は快適というわけです。
クッション性もあって体が床に当たってしまうような「床付き」もありません。
暑さ対策を万全にして夏を乗り切りましょう!

【散歩】
引く力の強い犬種ですから、子犬のころからしっかりと散歩中の歩き方をしつけておくことが大切です。
引っ張られて飼い主さんが転倒することもありますし、大きな音に驚いた拍子に愛犬が走り出してしまうこともあります。
散歩は朝夕各1時間くらいをメドにたっぷりさせてあげましょう。

【食事】
大型犬の場合は食べる量も半端なく多いですが、与えすぎてしまったり食事と運動のバランスが保てないと肥満になり関節部分に負担をかけてしまったりすることにもなりかねません。
成長期に肥満になると股関節形成不全になる可能性が高くなりますから、そのようなリスクを減らすためにも、まずは消化の良い食事を与えることが大切です。
食べものに含まれるタンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルの栄養分をスムーズに消化吸収できることが、
免疫力の高い体作りや体重のコントロールにも役立ちます。
良質なタンパク質を摂取し、乳酸菌や酵素を取り入れた食事で肥満対策をしましょう。
ドライフード中心の食生活から消化吸収の良い生肉(馬肉・鹿肉・猪肉・ラム肉、鶏肉など)や野菜、果物を含む食事に変えていくことで、肥満の予防に繋がります。

バーニーズ・マウンテン・ドッグをとおして考える

B.M.D Club of Amerika(アメリカバーニーズ・マウンテン・ドッグクラブ)の健康委員会のレポートの記事を見ると
  ・バーニーズの平均寿命が若すぎる
  ・肉腫、組織球種(皮膚腫瘍)、肥満細胞腫やリンパ腫などのガンの発生が多すぎる。
  ・股関節や肘の疾患が多い。
  ・甲状腺機能低下症
  ・麻酔に対する拒否反応が多すぎる。
  ・鼓腸による死亡が異常に多い。
などを挙げています。

上記の記事を日本で紹介しているのが、京都にあるバーニーズ・マウンテン・ドッグ専門犬舎の「Bern Star s.p.a.」というところです。
そのHPを見ていると、ヨーロッパやアメリカのバーニーズたちは様々な検査を実施し、病気の早期発見と適切な治療を進めているとこのことです。
しかし、残念ながら日本においては、検査機関の充実にはまだまだ至っていません。
レントゲンをはじめ各検査のための機材の設備や環境整備は、想像以上に負担が大きいことも原因のひとつと考えられます。

もし、早期発見ができ遺伝疾患を持つ犬種の交配を食い止めることができれば、バーニーズたちの命を救うことはできるでしょう。
バーニーズたちの症例を報告する機関としては、JAHD(日本動物遺伝ネットワーク)「主に股関節形成不全をはじめとする遺伝性疾患の診断並びにその診断結果の公開を柱に活動している団体」などとの連携によって遺伝的な病気をこれ以上増やさないという水際の対策が打てるのです。

【股関節形成不全を把握すれば適切な治療で良好な生活を送ることができます。骨の形成が完成する1歳から2歳の間にレントゲン検査を受けることが推奨されます。また、股関節形成不全がどのような症状を示すのかも知っておく必要があります。
股関節形成不全の発症の要因は70%が遺伝的要因で残りの30%は環境要因となっています。
また遺伝的要因と環境要因の複合により股関節形成不全の程度が決定されます。】――JAHD HPより抜粋

このような遺伝子疾患をもった犬が市場に出回らないことはもちろんですが、しっかりと検査をして健康な犬たちを誕生させることができれば、バーニーズの寿命もさらに延びるに違いありません。

また、遺伝要因が疑われる「組織球腫」もやはりバーニーズには多い病気で死亡率も高いです。
悪性の組織球腫では多臓器を侵していることが大半で、病院で診てもらったときには症状もかなり進行し、外科的な治療は困難とさえいわれています。
命を守り救えるのは、飼い主であるあなたです。
どのような病気であれ何気ない気づきが、大切な愛犬の命を救うきっかけとなります。

歩き方に変わりはありませんか。
どこかしんどそうにしていませんか。
食べる量は減っていませんか。
どこか痛がる様子はありませんか。
表情はいつもと変わりありませんか。
飼い主さんに何かを訴えようとしていませんか。

愛犬も自分の体がいつもと違うことを感じているはずです。
どうか、愛犬の小さなSOSを見逃さないであげてください。 
バーニーズ・マウンテン・ドッグをはじめ、多くの犬たちが未来をたくましく生きて行ける社会になることを願ってやみません。

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