獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「植物ステロール」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
コレステロールには善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)がありますが、一般的には「体に悪いあぶら」といったイメージが強いようです。
同じあぶらの仲間に植物ステロールというものがあります。
今回はこの植物系の油、植物ステロールの健康機能がテーマです。

植物ステロール

コレステロールとステロール、似たような名前ですがこの2つはどのような関係なのでしょうか?

コレステロールとステロール

フードに含まれる栄養素の1つに脂質があります。
脂質とは脂肪(あぶら)のことですが、この脂質を役割から見ると次の2つに分けられます。

《脂質の役割》
○エネルギーになる脂質 …中性脂肪
○細胞を構成する脂質 …ステロール 

脂質には体の中で燃えてエネルギーになる中性脂肪と、これとは別に細胞の膜成分としての大切な役目をしているステロールがあります。
そして細胞には動物性のもの(=肉、魚)と植物性のもの(=野菜、果物)とがあり、動物性のステロールをコレステロールと呼んでいます。

植物性のステロール(植物ステロール)にはシトステロールとかシトスタノールなどいくつかの種類がありますが、次のような性質をもっていることが確認されています。

《植物ステロールの性状》
○健康機能
 ・コレステロール値を下げる
 ・がん細胞の増殖を抑える
 ・皮膚の保水性を維持する
○難吸収性 …体に吸収されにくい

植物ステロールを含む食材

植物ステロールは植物細胞の膜成分ですので、私たちは通常の食事として1日200~400㎎程度摂取しています。
では植物ステロールはどのような食材に含まれているのか見てみましょう(佐藤斉 味の素㈱ 2003年)。

《穀類》
・小麦(68.8㎎)、トウモロコシ(177.6㎎)
《豆、タネ類》
・大豆(160.7㎎)
・ナタネ(308㎎)、ゴマ(714㎎)
《野菜、果物》
・ブロッコリー(42.6㎎)、キャベツ(10.7㎎)
・リンゴ(10.2㎎)

植物油

植物ステロールはその名前のとおり植物に含まれているのですが、どちらかというと野菜・果物よりは穀類・豆・タネ類の方が多いようです。
中でもナタネやゴマなど食用油の原料となるタネ類には多量の植物ステロールが含まれています。

平成6年植物油JAS格付結果報告書によると、各種植物油100g中の植物ステロールの含有量は大豆油(190㎎)、ゴマ油(474㎎)、米油(1,200㎎)などとなっています。
少し意外な感じですが植物油は上手に使うことにより、コレステロール値を下げて脂質代謝を改善する可能性があると考えられます。

脂質代謝の改善

ヒトもペットも年齢が進むにつれて中性脂肪やコレステロールの値が高くなってゆきます。
いわゆる生活習慣病です。
この中で脂質代謝を健全な状態に維持することは、肥満予防や血管を柔らかく保つために大切です。

コレステロール値を下げる

植物ステロールにはコレステロールの値を下げる作用があるという研究は、けっこう昔から行われており多くの成績が報告されています。
その中でウサギを使った試験データを1つ紹介しましょう(池田郁男ら 九州大学 1981年)。

●供試動物 ウサギ
●グループ
  :標準群 通常のエサ
  :対照群 通常のエサ+コレステロール0.5%添加 
  :試験群 通常のエサ+コレステロール0.5%
            +植物ステロール0.5%添加
●測定項目
  :血清および肝臓中のコレステロール量

コレステロールを含んだエサを毎日食べた対照群ウサギは、血清中の値がどんどん高くなっていきました。
これに対して、コレステロールが含まれていても同時に植物ステロールも摂っている試験群ウサギでは、半分以下の値に抑えられていました。

同様の成績は肝臓においても確認されました。
肝臓100gあたりのコレステロール量は対照群(49.9㎎)に対して試験群(26.4)とおよそ47%も減少していました。
このようにコレステロールが多い食事をしていても、同時に植物ステロールを摂取することにより、その値は大きく抑えられることが判ります。

ただし、エサにコレステロールを含まない標準群に比べると試験群でも高い値であることは変わりません。
やはり毎日の食事において、コレステロール量を低めに調整することは大切ですのでこの点はお間違えなく。

コレステロール吸収の阻害

ではなぜ植物ステロールにはコレステロールの吸収を阻害する作用があるのでしょうか?
その説明をする前に、ヒトやペットの体の中での脂質吸収のしくみをおさらいしましょう。

フード中の脂質はあぶらですので、そのままでは水に溶けず消化吸収されにくいという性質があります。
このため脂質は胃を通過して十二指腸に届くと、ここで胆汁という液に取り込まれます。

胆汁の成分である胆汁酸には界面活性作用があり、脂質を乳化させて消化酵素の働きを応援します。
そして胆汁は脂質=コレステロールを小腸の粘膜に手渡して吸収完了となります。

ここで登場するのが植物ステロールです。
植物ステロールもあぶらですので、摂取するとコレステロールと同じしくみで胆汁に取り込まれます。
しかし、植物ステロールは胆汁酸との結合性がとても強く、コレステロールの取り込みを邪魔します。
これにより小腸でのコレステロール吸収が抑えられるというわけです。

なお植物ステロールですが、胆汁酸との結合性が強すぎて逆に離れることができません。
すなわち小腸から吸収されることがほとんどなく、そのまま糞便と一緒に体外に排出されます。
植物ステロールの特性としてコレステロール値を下げ、自身は難吸収性であるというのは以上のようなしくみによるものでした。

健康な皮膚の維持

アロエベラという多肉植物があります。
一般的にアロエと呼んでいるもので、昔から民間療法の1つとしてヤケドの治療などに使われています。
このアロエベラに含まれる植物ステロールが皮膚の健康状態を維持するという研究報告があります。

保水作用

森永乳業㈱の三澤江里子らは、アロエ由来の植物ステロール(アロエステロール)を用いて次のような試験を行いました(2019年)。

●被験者 健康な成人女性(64人) 12週間観察
●グループ
  :対照群 ヨーグルトドリンクを摂取
  :試験群 ヨーグルトドリンク+植物ステロール(40μg)を摂取
●測定項目
  :皮膚の水分量、コラーゲン量

経時的に皮膚の水分量を測定した結果、試験開始4週目から両群の値に差が認められました。
植物ステロールを摂取している試験群では、皮膚の水分量=保水性が減少することなく維持されていました。

弾力性

お肌の健康状態として大切なものは水分量と弾力性です。
皮膚の弾力性とはコラーゲンというタンパク質の量で決まります。
三澤らの報告では、植物ステロールを摂取した結果、皮膚のコラーゲン量の減少が抑えられていました。

皮膚というのは表皮・真皮・皮下組織の3層から構成されていて、この内真皮は膠原線維と弾性線維という2つの線維から成ります。
コラーゲンはこの膠原線維の主成分です。

年を取りお肌にハリが無くなるのは、真皮の線維が減少するためです。
従って、植物ステロールの摂取によりコラーゲン量が保たれるということは、皮膚の弾力性が維持されるということを意味します。

今回紹介した植物ステロールという油成分には脂質の代謝を改善したり、丈夫な皮膚を維持するなど、高齢ペットの問題に役立ちそうな作用があります。
みなさんもペットの健康維持のために、植物ステロールを豊富に含むフードやおやつを試してみませんか?

(以上)

おすすめアイテム

ホリスティッククッキング

国産の無添加フード!


aatu
ホリスティッククッキング の購入はこちらから

オリジナルクッキー 膵ケアプラス

低脂肪で消化にも優しいクッキー


aatu
オリジナルクッキー 膵ケアプラス の購入はこちらから

おいもの膵ケアビスケット(ハード)

お米とおいもを使った美味しいビスケット


aatu
おいもの膵ケアビスケット(ハード) の購入はこちらから

執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

関連記事

  1. 犬にも人にも!免疫力には酵素の力と乳酸菌(プロバイオティクス)の…
  2. 【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「コラーゲンとゼラチン」…
  3. フードと一緒に水を与えたらダメ?犬の健康と水の関係
  4. おいしいだけじゃない!愛犬用生肉を上手に使い分けよう
  5. ヤギミルク 【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「注目したいヤギミルク」…
  6. ミニチュア・シュナウザーの食事とかかりやすい疾患
  7. スタッフがお届け!何でもレポートvol.45 「ピタシリーズのタ…
  8. 【獣医師が解説】乳酸菌サプリメントイーストスリム
歯石取りペンチ

新着記事

獣医師が解説

食事の記事

愛犬用新鮮生馬肉
国産エゾ鹿生肉
PAGE TOP