獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「ペットツーリズム」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
まずはご近所などの近場からデビューしたペットとのドライブですが、そろそろ慣れてくると一緒に旅行に行きたくなるものです。
今回はペットを伴った観光地への旅行について考えてみようと思います。

ペットツーリズム

『ペットツーリズム』ということばがあります。
ペット同伴の観光地への旅行といった意味になりますが、みなさんはもう体験済みでしょうか?

オーナーの悩み事

ペットを飼われている方と話をしていると、夏休みや年末年始の長期の休み期間でもなかなか旅行ができないと言われます。
実際のアンケート調査でも、愛犬オーナーの26.2%、愛猫オーナーの22.4%がペット飼育の悩み事として「旅行に行けない」と回答しています(楽天インサイト㈱ 2018年調査)。

また別の調査ではペットを飼わない理由として、「旅行など長期の外出がしづらくなるため」という答えが全体の23%前後を占めています(一般社団法人ペットフード協会 2019年調査)。

このように「ペットと暮らす=旅行に行けない」というイメージが強いのですが、近頃はそうでもないようです。

ペットツーリズムとは

ペットツーリズム(Pet Tourism)というと、ペット同伴の観光地への宿泊旅行と思いがちですが、実際はもっと広い範囲の考え方になります。

正式にペットツーリズムとは「飼い主とペットが一緒に、日帰りや宿泊の如何を問わず、非日常的な圏域や環境において、飼い主とペットの双方にとって余暇を楽しむためのレクリエーション行動」と定義されています。
少々堅苦しいのでかみ砕いていうと次の3つの活動になります。

《ペットツーリズムの内容》
○ペットと食事を楽しむ
  …ペット同伴OKなカフェやレストランで食事をする 
○ペットと遊ぶ
  …公園やドッグランなどに遊びに行く 
○ペットと泊まる
  …観光地などへ宿泊旅行に行く

ということでペットツーリズムとは、「オーナーとペットが共に楽しく時間を過ごすこと」という意味になります。

同伴旅行の魅力

近年、ペットとの旅行への関心が高まってきていますが、東洋大学の東海林克彦は次のような調査結果を紹介しています(2015年)。

○観光地へのペットツーリズム体験率
  …体験あり(48%)
○観光地へのペットツーリズム希望率
  …行ってみたい(72%)
○ペットツーリズム体験者のリピート希望率 
  …また行きたい(95%)

このようにペットと暮らしている方でも、条件さえ合えば一緒に旅行に行きたいと考え、体験者のほとんどはまた旅行したいと思っていることが判ります。
ペットツーリズム(同伴旅行)には何か大きな魅力があるようです。

ペットとの旅行

家族だけの旅行と比べてペットを連れての宿泊旅行には、いろいろとおもしろい特徴が見られます。

同伴旅行の効用

ペットと一緒に観光地を旅することには、どのような効果があるのでしょうか。先ほどの東海林は次のような作用をあげています。

○ストレスの解消
  …オーナーとペットの両者にとっての気晴らし効果
○思い出作り
  …たくさんペットの記念写真をとる
○オーナー同士の交流
  …旅行先ではオーナー同士がコミュニケーションをとる傾向が強い
○正しいしつけの必要性の認識
  …ペットのしつけとオーナー自身のモラルの向上
○豊かな社会
  …ペットに優しい社会=ヒトに優しい社会

みなさんならペットとの旅行にどのような効用を見つけるでしょうか?

同伴旅行の特色

静岡県と長野県にあるペット同伴の宿泊施設を利用したオーナーへの聞き取り調査結果があります(平成25年)。
これによると施設を選んだ基準として清潔さ、広さ、ドッグランの併設などの意見がありました。
やはり旅行先でもペットの運動は欠かせない様です。

さらにこの調査によると、チェックインからチェックアウトまでの施設利用者の行動には次の2つの特徴が見られました。

①ドッグランの頻繁な利用
  …チュックイン後まもなく、夕食後、朝食前などに利用する
②他の利用家族との交流
  …食事の後に他のペットオーナーとの会話を楽しむ
 
普段なら知り合うことのない他の地域の人たちとペットについての情報交換ができるということは、ペットツーリズムならではの楽しみかもしれません。

同伴旅行のペットケア

車酔い、熱中症、虫刺されの3つをペットの旅行の3大トラブルといいます。
これらの他にも旅行中には思いもかけないトラブルが起こります。

旅行中のトラブル

自宅ではしっかりしつけをしていても、ホテルの部屋や訪問先の施設などでトイレの失敗をしてしまうことがあります。
この背景には旅行中のペットは興奮気味であること、周りの環境がいつもと違うことなどがあります。

前回紹介したアンケートでも愛犬とのお出かけ時の失敗として、「外出先の施設や車内で粗相をしてしまった(14.1%)」という回答がありました(㈱ホンダアクセス調べ 2017年)。
旅行中のペットには、マナーパンツ・マナーウェアをはかせておくのが良いでしょう。

ペットツーリズムでは観光地の他に、キャンプ地などで自然を楽しむというのも人気です。
このアウトドアでのペットのトラブルとして多いのが虫刺されと誤飲・誤食事故です。

イヌはとても好奇心が旺盛な動物であるため、日頃の散歩コースとは違った草むらや川辺を見つけるとどんどん入っていきます。
少し目を離した隙にヤブカやマダニに刺され皮膚が腫れたり、ゴミや石などを飲み込んでしまったりします。
旅行の出発前には、訪問先近くの動物病院を調べておくと安心です。

迷子対策

旅行中はさまざまなトラブルが付きものですが、日頃以上に大騒ぎになるのがペットの迷子です。
旅先のペットは興奮していて行動が活発になりがちです。
また初めて訪れる場所のため土地カンが無く、迷子になってもどこに帰ればいいのか判らなくなっています。

雑誌を読んでいると、ペットの迷子対策として首輪やウェアにオーナーの電話番号など連絡先を書いておきましょうとあります。
しかし近頃は個人情報の点からこれはこれでまた別の心配があります。
ここでお薦めするのがマイクロチップの活用です。

マイクロチップは直径1~2㎜、長さ1㎝程度の小さな電子標識で頸の皮下に注射で埋め込みます(注射時には麻酔はしません)。
また電池を必要としないため、一度装着すれば一生交換することもありません。

マイクロチップには国、動物種、個体番号などの識別情報が入っており、日本獣医師会のデータベースに管理されています。
専用のリーダーがないと読み取りはできないため、オーナーの個人情報が漏れてしまうという心配もありません。

海外と比べると日本のマイクロチップ装着率は低いのですが、ペットツーリズムの普及に伴い、今後ペットの身元証明ツールとして広がっていくと考えられます。
興味のある方はかかりつけの動物病院へご相談下さい。

旅行前後のペットケア

最後に旅行前から帰宅後までのペットの健康ケアをまとめましょう。

○出発前
・かかりつけの動物病院でペットの健康チェックを受ける
・旅行先や日程などを知らせて注意事項を確認する
・もしもの時に備えて旅行先周辺の動物病院を調べておく

○旅行中
・マナーパンツをはかせる
・リードを外さない
・3大トラブル、誤飲や迷子に注意する
・緊急時のためにペット保険証をお忘れなく

○帰宅後
・ケガや骨折、虫刺されなどの有無をチェックする
・帰宅後1か月程度は自宅で体調観察を行う

近所の公園への散歩から観光地への宿泊旅行まで、ペットツーリズムは愛すべきペットと大切な時間を共有するということです。
この時求められるのは、その場みんなが気持ちよく時間を過ごせるよう公共の場のルールを守ることです。

今後国内でペットツーリズムが理解され普及してゆくためには、外出先・旅行先での両者のマナー、すなわちペットのしつけとオーナーのモラルがポイントになると思います。
ではみなさん、ペットとの楽しい時間をお過ごし下さい。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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