獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「夏バテ予防に乳酸菌」

連日、テレビのニュースでは各地の暑い様子が伝えられています。熱中症対策として適切なエアコンの使用が薦められていますが、外の暑さと冷房の効いた室内の温度差は夏バテを招くといわれます。この夏バテ対策に乳酸菌が良い働きをするという情報をご存知ですか?

【ヨーグルトと夏バテ予防】

夏バテとは室外と室内の温度差により、体温を調節する自律神経がダメージを受けることで起こる睡眠不足や疲労感・気力の低下などの症状の総称です。夏バテは体調不良でありメンタルヘルスの不調ともいえます。

夏場の脱力感

毎年夏バテの症状を感じている健康な男性49人を対象として、夏場の12週間に酸性乳飲料(対照群)またはヨーグルト(試験群)を摂取してもらい、体調の変化を調査した試験報告があります((株)明治 プレスリリース 2018年)。

これによると全身のだるさ/脱力感に関して、試験開始8週後から両群に差が認められ、12週後にはヨーグルトを摂取していた試験群の方が有意に軽度であったという結果が得られています。

夏場の疲労感

脱力感と並んで暑さによる疲労感があります。疲労感は睡眠をとっても体のだるさが取れない、または睡眠自体が十分に取れず日中に眠気が残るなどの疲れがたまった状態です。これに対する回答も同様に試験開始8週後および12週後で試験群の方が有意に軽度となりました。

今回の試験で用いられた酸性乳飲料とは、牛乳を乳酸菌で発酵させたものに甘みを加えた飲み物です。ヨーグルトと比べて甘酸っぱく飲みやすいものの、体内に入る乳酸菌数は少なくなります。このように夏バテ症状の軽減には、毎日継続して十分な乳酸菌を摂取することが良いようです。

夏場ストレス

毎日の仕事はもちろん、特に夏場の負荷が大きいとされる職業にタクシーの運転手さんがあります。運転中は肉体的(=体力)および精神的(=集中力)ストレスがたまりやすく、加えて夏は乗車してくる客のために常にエアコンをつけているため体調管理が大変難しいといわれます。

これを受けてヨーグルトの摂取がタクシー運転手の夏場の体調改善に及ぼす影響を調査したというおもしろい報告がありますので見てみましょう(大力一雄ら ㈱明治マーケティング 2020年)。

●被験者 軽度のストレス状態とされるタクシー運転手
●試験期間 7~10月
●グループ
  :対照群(47人)
  :試験群(39人)
…ヨーグルトドリンクを1日1本(112mL)摂取×12週間
 
上記の条件で試験終了時の健康状態を聞き取ったところ、試験群の方が頭のスッキリ感、睡眠の満足感が良好であり、さらにはめまい・ふらつき、疲労感、お腹の調子(下痢)に関しても有意に改善されたとの結果でした。

そしてこれらの成績をまとめて総ストレススコアとしたところ、試験開始前は両グループともに高い値を示していましたが、期間の経過に伴ってヨーグルトドリンクを摂取していた試験群に有意なスコアの低下が確認されました。

職場ストレスが大きいタクシーの運転手さんにとってもヨーグルトは夏場の体調を改善し、QOL(生活の質)を維持向上するのに有用な食材と考えられます。

【乳酸菌とストレスホルモン】

以前、私たち動物は何かしらのストレスを感じると、これを元の状態に戻すためのホルモン(=ストレスホルモン)が分泌されることをお知らせしました。このホルモンの1つとして唾液中に分泌されるコルチゾルというものがあります。

起床時のストレス

1日24時間の唾液中コルチゾル濃度を測定すると、起床時に最も高くその後時間の経過に伴い徐々に減少するというリズムがあります。すなわち私たちは、生理的には朝目覚めた時に最も大きいストレスを感じていることになります。

健康な成人男性を対照群(プラセボ摂取:17人)と試験群(乳酸菌摂取:16人)に分けて8週間観察し、起床時の唾液中コルチゾル濃度を比較した報告があります(松浦倫子ら 北海道大学 2021年)。

これによると試験期間中、対照群のコルチゾル濃度はほぼ一定であるのに対し、乳酸菌を摂取した試験群では経過に伴い濃度は減少していました。毎日乳酸菌を摂取することにより良好な睡眠が得られ、これによって起床時のストレスが低減されていることが判ります。

心理的なストレス

朝の目覚めという生理的ストレスの他に、乳酸菌は心理的なストレスも軽減する作用があります。この試験では被験者に対して、人前でのスピーチや暗算問題をさせるという心理的な負荷を与えました。

両群共にストレス負荷を与えた直後、唾液中のコルチゾル濃度は急上昇しますが、その後は試験群の方が低値で推移するという結果でした。単に気分的な評価だけでなく、体内のホルモン分泌量という点からも乳酸菌はストレス軽減に関与していることが確認できます。

夏場は不眠から目覚めが悪く、また心理的なイライラが高まる季節です。乳酸菌の摂取は様々なストレスから引き起こされる夏バテを軽減してくれる可能性があります。

【乳酸菌と良質な睡眠】

夏バテの最も大きな背景は熟睡できないことです。日中の眠気や脱力感・疲労感などは睡眠不足からきています。近年では乳酸菌と良質な眠りとの関係に関する研究がさかんに行われています。

朝の目覚め

睡眠の質に不満を感じている健康な成人男女 220 名を対象にした試験報告です。半数を対照群(プラセボ摂取)、もう半数を試験群(乳酸菌摂取)とし、4週間後の睡眠状態について調べています(サッポロホールディングス㈱ プレスリリース 2019年)。

朝目覚めた時の眠気をスコア化して両群を比較しました。この場合、数値が大きいほど眠気が弱い=ぐっすり眠れたことを表します。試験開始前は両群に差はありませんでしたが、4週後には試験群の方が高スコアとなっていました。

目覚めた時の疲労感

また目覚めた時の疲労回復度をスコア化したところ、この場合も4週後では試験群の数値が大きい=疲労感が小さいという結果になりました。

このように乳酸菌を継続摂取することにより、良質な睡眠が得られます。そして前日の疲れが解消され、トータルとして夏バテ症状の軽減につながると期待されます。

今回は乳酸菌が夏場ストレスの軽減や夏バテ対策に有用であるという研究データを紹介しましたが、最後に1つ注意点をお伝えします。それは乳酸菌の摂取期間です。前出の試験条件ではヨーグルトや乳酸菌を摂取する期間が4週間、8週間、12週間と長期に設定されていました。

善玉菌である乳酸菌を摂取すると大腸に届き、ここに定着して少しずつ増えてゆきます。そして悪玉菌の活動が抑えられ、腸内細菌叢はゆっくりと良いメンバーに置き換わりますが、これに1か月以上の時間が必要というわけです。

乳酸菌は単にお腹の調子を整えるだけでなく、腸内環境を好転させてストレス緩和や良質な睡眠を提供し、私たちのメンタルヘルスも応援してくれます。今年の夏バテ予防として乳酸菌を活用してみてはいかがでしょうか。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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