ペットとの生活に関する記事

ペットとの生活編: テーマ「ペットも眠るシーツの除菌」

ペットとの生活編: テーマ「ペットも眠るシーツの除菌」

前回紹介したアンケート結果によると、ペットオーナーのおよそ3人に1人は、毎日愛犬や愛猫と一緒に寝ているということでした。ペットと一緒に眠るということは寝具を共有することですので、その衛生ケアは両者にとってとても大切です。

【布団の中の微生物】

知りたいような、知りたくないような気がするのが、寝具に棲みつく微生物の種類やその数です。まずは布団の中にいる細菌やダニの生息数を確認しておきましょう。(ここで紹介するのはペットと共有していない布団の測定データです)

布団の中の細菌とカビ

布団と言っても綿や羽毛などいろいろありますが、中わたの種類別に生息する微生物の種類と数を調査した次のような報告があります(山崎義一 日本化学繊維協会 1988年)。

●調査対象 1~15年間使用された布団(合計42点)
綿(16点)、ポリエステル(17点)、羊毛(9点)
●検出微生物 細菌、カビ、ダニ
●結果 
《中わた1g中の細菌数》
   綿(13万5,000)、ポリエステル(1,000)、羊毛(4,200)
《中わた1g中のカビ数》
   綿(150)、ポリエステル(80)、羊毛(110)
《中わた10g中のダニ数》
   綿(0~180)、ポリエステル(3~60)、羊毛(2~24)

今回検出された細菌はいわゆる雑菌を含めたものですが、綿布団ではケタ違いに多いことが判ります。また細菌に比べると、カビは思ったほど多くはなく少し安心しました。

布団の中の細菌とカビの数

布団の中のダニ

布団に棲みつく微生物としては、細菌やカビよりもアレルギーの原因になるダニの方が気になります。ダニも細菌と同じように、ポリエステルや羊毛に比べると綿布団により多くの数が確認されています。

このように一般の細菌やカビ、そしてダニに関しても綿布団に多く生息していることが判ります。これは綿の特徴である高い吸湿性や保湿性によるものです。私たちヒトやペットにとって暖かく寝心地が良い布団は、適度な温度と水分がそろっています。これは微生物にとっても棲みよい環境であるというです。

布団の中のダニの数

【寝具の洗濯】

ハンカチやタオルのように、出来ればベッドシーツや枕カバーも毎日取り換えたいものですがなかなかそうはできません。前回のアンケート結果でも、毎日寝具のケアをしている働くお母さんの割合は全体の1~2%、半数以上の方が「週1回は実施できていない」と回答しています。

毎日洗濯できない理由

では寝具を頻繁に洗濯できない理由としては何があるのでしょうか?働いているお母さんからは次のような回答が返ってきています(P&Gジャパン㈱ プレスリリース 2018年)。

《シーツ》
時間がない(64.2%)
干す場所がない(33.0%)
天気が予測できない(29.6%)
《枕カバー》
時間がない(59.6%)
天気が予測できない(24.5%)
疲れる(18.5%)

このように「忙しく時間がない」という理由が大きな割合を占めているのは納得ですが、もう1つ「天気が予測できない」というものがありました。同じ洗濯をするのなら天気の良い日に行い、しっかりと乾燥させたいというお母さんたちの気持ちもよくわかります。

シーツを頻繁に洗濯できない理由

洗濯の除菌効果

私たちが着用した肌着の汚れ成分の68%は脂質ということです(ライオン家庭科学研究所 1997年)。ペットと違って長い被毛がないヒトでは、衣類やシーツが直接皮膚と接触するため皮脂や皮膚の角質層が剥がれます。これが細菌やカビ、ダニのエサになり微生物が寝具に棲みつく背景です。

ペットと一緒に寝ているオーナーはもちろんですが、近頃は一般の人でも洗濯に除菌効果を求めるようになりました。では洗濯とは単に汚れを落とすだけで細菌やカビを取り除く作用は無いのでしょうか?

東京家政学院大学の藤井眞理子らは、家庭で行う洗濯の除菌率を調査しました(2013年)。使用したのは市販の陰イオン系弱アルカリ性粉末洗剤(蛍光剤、酵素配合)で、洗濯前後の細菌数をもとに除菌率を算出しています。

結果として洗濯による衣類の除菌率は肌着と枕カバーが99%、シーツとタオルが90%とのことでした。このデータは洗濯物を干す前のものですが、自宅で普通に行う洗濯でも付着している細菌のほとんどは取り除かれていることが判ります。みなさんどうぞご安心下さい。

洗濯の除菌効果

【乾燥による除菌】

洗濯を行った後の衣類やシーツはパリッと乾かしたいものです。汚れが落ちた洗濯物にわずかに残っている細菌やカビにとどめを刺す意味からも、しっかりとした乾燥が求められます。

外干しの除菌効果

洗濯物の外干しに対して乾燥はもちろんですが、私たちは紫外線による殺菌効果も期待しています。洗濯物にしっかりと太陽の光が当たると細菌は死にますが、日陰では乾燥はしてもなんとなく生き残っているような気がします。

衣類を同じ屋外に干した場合の日向と日陰との除菌効果の違いを調べた報告があります(濱田信夫ら 大阪市立環境科学研究所 2003年)。

●洗濯対象 タオル
●外干し条件 夏(気温30~33℃)、2時間
●紫外線量
  日向干し …2.8~3.4 mW/cm2
  日陰干し …0.2~0.4 mW/cm2
●検査対象
  黒カビ …クラドスポリウムというカビの仲間で、ヒトのアレルギーの原因となるもの

白癬菌 …カビの1種でいわゆるミズムシの原因菌
大腸菌 …ペットの敷料に多く確認される細菌

洗濯直後のタオルに付着するカビや細菌の数を100とした場合、それぞれの外干し条件で2時間後の残存量を測定したところ次のような結果になりました。

《日向干し》
黒カビ(5.3)、白癬菌(4.3)、大腸菌(2.9)
《日陰干し》
黒カビ(12.5)、白癬菌(5.7)、大腸菌(2.9)

太陽の光が直接あたる日向とあたらない日陰とでは、紫外線の量はおよそ10倍の違いがあります。結果では大腸菌に比べて黒カビと白癬菌はやや生き残りが多い傾向がありましたが、思っていたほど除菌効果には大きな差はみられませんでした。

確かに殺菌という点で紫外線は有効ですが、もう1つ洗って濡れた洗濯物に細菌やカビを「増殖させない」という点においては、速く乾燥させることがポイントであると言えそうです。

外干しの除菌作用(タオル)

乾燥がもつ除菌作用

夏場の日陰干しでも洗濯物の除菌作用が認められるのは、殺菌というよりは乾燥による細菌やカビの増殖抑制の働きです。ということは外干しにこだわらなくても、速く乾燥させれば同様の効果が期待できるとも考えられます。

洗濯物の乾燥には外干しの他に部屋干しや乾燥機などいろいろありますが、これら乾燥方法と除菌効果の関係データを紹介しましょう(藤井眞理子ら 東京家政学院大学 2013年)。洗濯直後の衣類に付着している細菌数を100として、各種乾燥後の生残菌数を測定した結果は次のようになります。

《乾燥後の細菌の生残割合》
アイロン(3)
日向干し(10)
部屋干し(27)
乾燥機(32)

アイロンは高温によって一気に殺菌し乾燥させるため、除菌率97%という大変優れた洗濯物の殺菌ツールと言えます。シーツなど大きな寝具はなかなか面倒ですが、タオルや枕カバーなら十分活用できると思います。部屋干しや日陰干しではどうしても細菌の生き残りが気になるという方にはアイロンの活用をお薦めします。

今回、部屋干しよりも乾燥機の方が生残菌数が多いという結果でした。乾燥機は外干しや部屋干しと比べると速く乾燥しますが、機内は閉鎖された空間です。内部のそうじがしっかりされていないと、逆に細菌やカビが洗濯物に付着することになります。乾燥機を使用する場合はどうぞメンテナンスをお忘れなく。

乾燥方法と除菌効果

ペットと一緒に寝ているオーナーのみなさんにとって、寝具の洗濯は大変な作業と思います。ヒトとペットの両者の快適な眠りと健康のために、いろいろな工夫により寝具の衛生ケアに努めて下さい。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

関連記事

  1. 【獣医師が解説】老犬ケアの開始時期
  2. 【獣医師が解説】ペットとの生活編: テーマ「ペットと一緒にドライ…
  3. 暑さに弱い愛犬たち
  4. ドッグランのあるサービスエリア(SA)パーキングエリア(PA)で…
  5. ペットとの生活編: テーマ「ペットとの眠り」
  6. 愛犬・愛猫の死を迎えたときにすべきこと
  7. 紫外線のメリットとデメリット
  8. 【獣医師が解説】暑さ対策
国産エゾ鹿生肉

新着記事

獣医師が解説

食事の記事

ホリスティッククッキング
老犬馬肉
PAGE TOP