健康

自律神経の乱れで起こる愛犬の体調不良~冬は、意識して基礎代謝と免疫力を高めよう~

自律神経の乱れで起こる愛犬の体調不良

体調不良に関わる自律神経の働き

神経系の基礎知識

中高年者の多くが抱える、身近で厄介な病気の一つを挙げるとしたら、「神経痛」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
同様に、長寿化が進んできた愛犬たちの世界にも、神経系の病気が増えてきました。

そもそも、「神経系」とはどのような働きをしており、愛犬たちの健康とどのように関係しているのでしょうか。
神経系とは、無数の細胞や組織と連絡を取り合うために、体のすみずみまで網の目のように張り巡らされたネットワークのことです。
そして、大きくは「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」と「末梢神経(まっしょうしんけい)」に分かれます。
このうち、中枢神経とは、中枢と呼ばれている「脳」と「脊髄(せきずい)」を作っている神経のことです。
一方、「末梢神経(まっしょうしんけい)」とは、中枢から出ている神経線維(しんけいせんい)と呼ばれている糸状の長い細胞で構成される組織のことです。

自律神経とは

身体の各部に存在する末梢神経は、更に、機能によって、「体性神経(たいせいしんけい)」と「自律神経 (じりつしんけい)」に分類されています。
「体性神経」とは、大脳皮質(だいのうひしつ)と呼ばれている脳の表面と直結している末梢神経です。
例えば、骨格の運動などを自分の意思でコントロールできる「運動機能」の調整や、視覚(=みる)・聴覚(=きく)・触覚(=さわる)・味覚(=あじわう)・嗅覚(=かぐ)といった「五感の情報」を脳に伝達する「知覚機能」など、本能的な行動や、外部からの情報を統合して個体の意思決定を行うための情報を伝達し、制御しています。

一方、「自律神経」とは、自らの意識とは関係なく24時間自動的に働き続けている末梢神経です。
・呼吸の調整
・心拍数や血圧などの調整
・発汗(はっかん)や膀胱(ぼうこう)の収縮・拡張などによる水分量や体温の調整
・胃腸を動かし消化
など
循環器、消化器、呼吸器などの各内臓器の活動を制御したり、体内の状態を調整したりするための情報を伝達し、身体の内部環境を一定に保つ機能を担っています。
睡眠やリラックス状態の犬は副交感神経が優位に働く

交感神経と副交感神経

自律神経系は、興奮した時に優位になる「交感神経(こうかんしんけい)」と、リラックスした時に優位になる「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」の2つがバランスを保ち合うことで成り立っています。

この関係を自動車の機能に例えて、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキだと説明されることがあります。
自動車のアクセルを踏んでいる時には、エンジンにガソリンが送り込まれて走行しますが、同じように、交感神経が活発に(優位に)働いている時には、血圧や血糖を上げ、血液を筋肉や脳に集めて全身が活動します。
一方、自動車のブレーキがかかっている時には、減速したり、停車したりしますが、同じように、副交感神経が優位に働いている時には、身体がリラックスした状態となって機能を回復させます。

この仕組みが崩れてくると、自律神経の機能が低下した状態になります。
あなたの愛犬が、自律神経の健康な状態を維持し、いつまでも若々しく元気に暮らしていくためには、交感神経と副交感神経のバランスを意識した生活のリズムや生活環境を確保してあげることが大切です。

例えば、愛犬には、一日のうちで、屋内でのんびりと昼寝をして過ごしている時間もあれば、屋外での散歩中に五感を活発に働かせて身の回りの危険な状態を察知し回避するといった適度なストレスを受ける時間もある、といったメリハリのある生活リズムが必要なのです。

もし、あなたの愛犬が、長期間にわたって、強いストレスばかりにさらされているとしたら、常に、交感神経が優位に働いている状態が続き、バランスが崩れ、免疫力が低下してしまい、細胞、臓器、内分泌気管などの働きにも、様々な悪影響を及ぼしてしまいます。
例えば、次のような症状が見られたら、要注意です。
・感染症やアレルギー症状などで体調を壊しやすくなる
・胃腸の動きが悪くなり、下痢や便秘になる
・体温の調整が苦手になる
・血圧が不安定になり、急に上がったり下がったりする
・呼吸の調節に支障が生じる
など

自律神経の機能低下による影響

自律神経の機能が低下すると、「代謝(たいしゃ)」に影響を及ぼしてしまいます。
代謝とは、食べものとして体内にとり込んだ栄養素(例えば、たんぱく質や炭水化物など)を吸収し、生きていくために必要なエネルギーを作り出して消費する一連の仕組みのことです。
もし、何もしないでじっとしていたとしても、エネルギー消費が行われています。
これは、「基礎代謝」と呼ばれています。

同じ犬種で、同じくらいの大きさの愛犬が、同じくらいの量の食事と運動をしていたとしても、基礎代謝の差が、体格の差として現れてしまう場合があります。
もし、あなたの愛犬が肥満気味になっている場合、何らかの原因によって、自律神経の機能が低下し、基礎代謝の仕組みが崩れてしまっている可能性もあります。

また、自律神経の機能の低下は、「免疫力(めんえきりょく)」とも関係しています。

免疫力とは、身の回りの病原菌や身体に汚染物質など有害なものから身体を守り、健康を保つために備わっている力です。

低体温の影響

実は、基礎代謝と免疫力は、とても深く関係しています。
基礎代謝を上げようとすると、自然と免疫力が上がり、逆に、免疫力を上げようとすると、自然と基礎代謝が上がります。
そして、基礎代謝と免疫力の両方に関係しているのが、「体温」です。

愛犬たちの平熱には、個体差がありますが、概ね小型犬では37.5~38.5℃、大型犬の場合にはそれよりも1℃くらい高めになります。
散歩などの適度な運動をしている時には、体温が上がり、「血液の循環(血流)」がよくなります。
血液の循環がよくなると、身体中の細胞に栄養や酸素が送られ、老廃物を持ち帰る働きが活発に行われるようになって、基礎代謝が上がります。
同時に、血液中の免疫機能をはたしている白血球が体の中をめぐることで、免疫力が高まるのです。

冬は、気温が低く、空気が乾燥してウイルスや菌の生存率が高くなっています。
そのため、感染症やアレルギー症状など、体調を崩してしまう愛犬たちが増えてきます。
朝晩の散歩などで冷えきった愛犬たちの身体は、体温が下がり、基礎代謝が低くなって、胃腸などの内臓機能の働きも悪くなりがちです。
また、体温が下がって血流が悪くなったことによって、免疫力が落ちてしまい、空気中のウイルスや菌に十分に対抗できなくなってしまいます。
特に、外飼いしている犬や老犬などには、細心の注意が必要です。
冬の乾燥した木

基礎代謝と免疫力の向上

基礎代謝を高める食べもの

愛犬たちのエネルギー源の中でも、特に重要な役割を果たしているのが、たんぱく質を構成している(原料となっている)「アミノ酸」です。
アミノ酸は、身体の筋肉を作ってくれます。
筋肉は身体の中で最も多くの熱を生み出しており、筋肉量が増えれば、基礎代謝量を高めることができます。
そして、筋肉を増やせば、基礎代謝が高まって、肥満になりにくい体質になります。

もし、愛犬たちが、アミノ酸が含まれている肉や魚介類などだけを食べていたとしても、ある程度の健康は維持できます。
肉や魚介類に含まれる動物性たんぱく質には、「必須アミノ酸」がバランス良く含まれています。
必須アミノ酸とは、体内では合成されず、食べものなどから栄養分として摂取しなければならないアミノ酸のことです。
また、必須アミノ酸を多く含むたんぱく質を「良質たんぱく質」と呼んでおり、アレルギーになりにくいとされています。

基礎代謝を高めていくためには、良質たんぱく質をしっかりとって、適度な散歩や運動を続けることで筋肉をつけていくことが大切です。

免疫力を高める食べもの

根菜類

昔から、東洋医学では、「冷えからくる病気」には、「根菜類(こんさいるい)」が良いとされています。
これは、愛犬たちにも当てはまります。

「蓮根(れんこん)」は、主成分である澱粉(でんぷん)が身体を温めてくれます。
「牛蒡(ごぼう)」に豊富に含まれる食物繊維は、腸の機能を整える働きをします。
「人参(にんじん)」に含まれる色素であるβカロチンは、体内にとり込まれるとビタミンAに変換し、目の神経伝達物質となり、皮膚や粘膜の細胞を正常に保つ働きもします。
また、これらの根菜類には共通して、身体に悪い「活性酸素」を抑えてくれる「抗酸化作用(こうさんかさよう)」が備わっており、血流を良くして体温を上げて、免疫力を高める働きをしています。

発酵食品

免疫力を高めるためには、愛犬たちの食事の中に発酵食品(はっこうしょくひん)を積極的にとり入れることも、有効です。

発酵食品とは、食材に付着した「善玉菌(微生物)」が繁殖活動を繰り返す過程で、でんぷん質やたんぱく質が分解され、糖分やアミノ酸などの有益な栄養成分に変化した納豆、チーズ、ヨーグルトなどの食品のことです。

発酵食品には、元の食材の栄養素、善玉菌の有効成分、そして発酵過程でできた「食物酵素(しょくもつこうそ)」の3つの有効作用が備わっていて、これらが相互に免疫力を高める働きしています。
例えば、ヨーグルトの場合であれば、元の食材である牛乳には、免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質が含まれていて、細菌やウイルスがカラダに侵入するのを阻止し、乳酸菌などの善玉菌が、腸内環境を整えて免疫力を高め、酵素が、食べものの消化、分解、吸収を助ける働きをし、体内の新陳代謝を正常に保っています。

食物酵素は、愛犬たちの体外からとり入れられる酵素ですが、愛犬たちの体内で作られる酵素があります。
これは、「潜在酵素(体内酵素)」と呼ばれています。

潜在酵素は、遺伝子によって、一生のうちで作られる量が決まっています。
そのため、あなたの大切な愛犬が、潜在酵素を早く使い切ってしまうことがないように、日頃より食生活には気を付けてあげましょう。

潜在酵素は、「消化酵素(食べもの分解する酵素)」と「代謝酵素(分解した栄養分をエネルギーへと替える酵素)」として使われます。
そのため、なるべく消化に使うエネルギーを節約して、効率よく分解した栄養分をエネルギーへと替えることができれば、長期に渡って免疫力を維持しやすくなります。

粘膜を強くする食材

粘膜を強化することは、感染予防に役立ちます。
「おくら」「やまいも」などのネバネバした食品や「海藻」などのヌルヌルした食品には、粘膜を強化して、免疫力を高める働きがあります。
また、「かぼちゃ」などの緑黄色野菜には、βカロチンが含まれており、体内にとり込まれるとビタミンAに変換して、免疫力を高める機能があります。

生肉

基礎代謝を高めるためには、肉や魚介類から良質たんぱく質をしっかりとり入れることをお勧めしました。
実は、肉に豊富に含まれている「食物酵素」は熱に弱いため、48度以上の熱で調理すると失われてしまいます。
そのため、生で食べることで、良質たんぱく質を効率よくエネルギーに変えるができるようになり、長期に渡って、免疫力を維持しやすくなります。

愛犬たちの食生活の中に、「生肉」を積極的にとり入れることは、基礎代謝を高めると同時に、免疫力を良い状態で維持していく、という点においても、とても理にかなっている、と言えます。

昼間の太陽の下で、適度な散歩や運動などの規則正しい生活を愛犬と

免疫力を高めるライフスタイル

ヒトのライフスタイルの多様化による影響で、夜型の犬も増えているようです。
中には、睡眠不足で免疫力が低くなってしまったり、太陽の紫外線の照射時間が短く、免疫力を強化すると言われているビタミンDが不足してしまってたり、また、家族と遊ぶ時間がないためにストレスが溜まってしまい、活性酸素によって老化が早まり、免疫力を低下させている場合もあるようです。

日頃から、愛犬と一緒に過ごすかけがえのない時間を大切しましょう。
常に、自律神経のバランスを整える努力が必要です。
ぜひ、リラックスできる住環境、添加物のない食生活、そして、昼間の太陽の下で、適度な散歩や運動などの規則正しい生活を送りましょう。
愛犬の就寝時には、電気を消して部屋を暗くし、暖房にたよらず「体温調節」を愛犬自身ができるようにしてあげましょう。
あなたと愛犬の両方が自律神経の状態を適切に確保でき、免疫力を高め、そして健康を維持できるようなライフスタイルを目指しましょう。

愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修

帝塚山ハウンドカム 看板犬いわて
株式会社帝塚山ハウンドカム
代表取締役 川瀬 隆庸

  • 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
  • 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
  • ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
  • 小動物栄養管理士認定
  • D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
  • 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
  • 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了

愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。

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