獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの病気編: テーマ「てんかん発作のコントロール」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
てんかん発作は突然起こります。ヒトの場合では事故やケガにつながり、ペットではオーナーへの大きな精神的負担となります。現在、この発作をなんとかコントロールできないものかという研究が進んでいます。

てんかんとアミノ酸

てんかんは脳の電気配線がショートした状態といえます。脳内で電気が過剰に流れるアクセル(=興奮)と、これを抑えるブレーキ(=抑制)のバランスが崩れてしまうのがてんかん発作です。

2種類のアミノ酸

アミノ酸はタンパク質を作っている物質であり、全部でおよそ20種類あります。ペットがお肉(=タンパク質)を食べると消化が進み、アミノ酸に分解吸収されて体中に運ばれます。

このアミノ酸の中には脳を興奮させる「興奮性アミノ酸」と、脳をリラックスさせる「抑制性アミノ酸」があります。それぞれの代表として次のものがあります。

〇興奮性アミノ酸
…グルタミン酸、アスパラギン酸

〇抑制性アミノ酸
…グリシン、GABA(γ-アミノ酪酸:ギャバ)

日本獣医生命科学大学の長谷川大輔らは、実験的にイヌにてんかん発作を起こさせて、脳内のアミノ酸レベルを測定しています(2004年)。試験条件は次のとおりです。

●供試犬
:健康犬(13頭)
:てんかん発作犬(11頭) …けいれん誘発剤を投与
●測定したアミノ酸
:興奮性アミノ酸 …グルタミン酸
:抑制性アミノ酸 …GABA(ギャバ)

興奮性アミノ酸

測定の結果、健康犬の脳内のグルタミン酸量はおよそ1.3 nmol/mlでした。これがてんかん発作後6時間以降は3倍近くにまで増加し、そしてこの高い値は発作後48時間まで続きました。

通常、脳内のグルタミン酸量は一時的に増加してもその後元の量まで戻り、常に一定量に調節されています。この仕組みが上手くはたらかないと脳は興奮状態が続いたままになります。これがてんかん発作です。

抑制性アミノ酸

健康犬の脳内のGABA量はおよそ130 pmol/mlでした。これがてんかん発作後の3時間以降は1/3近くまで減少してしまいました。そして、48時間を経過するとGABAレベルは徐々に元の値へ回復しました。

脳が興奮状態になった時、これを落ち着かせようとはたらくのが抑制性アミノ酸のしごとです。てんかん発作が起きた時、脳内のGABAはどんどん消費されるということです

興奮毒性

ここで興奮性アミノ酸の代表であるグルタミン酸についてもう少し見てみましょう。グルタミン酸はコンブなど含まれているアミノ酸で、これの仲間であるグルタミン酸ナトリウムは「うま味調味料」としてみなさんもよくご存じです。

グルタミン酸は私たち動物にとって必須アミノ酸ではありませんが、脳や神経の電気信号を送る仲立ち役という重要なしごとをしています。これを「神経伝達物質」といいます。

脳の中のグルタミン酸が正常量の場合、認知や記憶・学習といった高度なしごとをしますが、その量が過剰になると電気信号でいっぱいになり脳はショートしてしまいます。

このように脳内の過剰なグルタミン酸は神経細胞に対して一種の毒性を示すため、これを「興奮毒性」と呼んでいます。今回のてんかんや自閉症、アルツハイマー病などの疾患には、過剰なグルタミン酸による興奮毒性が関係しているといわれています。

現在、GABA(ギャバ)など脳のブレーキ役である抑制性アミノ酸を補給することにより興奮毒性を抑えて、てんかんやアルツハイマー病を軽減させる研究が進められています。

てんかんと抗酸化物質

私たち動物にとって酸素は大切なものですが、同時にからだの細胞は常に酸素によってダメージを受けています。これがいわゆる活性酸素による酸化ストレスです。

アスコルビン酸

活性酸素から細胞を守る役目をするのが抗酸化物質です。抗酸化物質にはいろいろなものがありますが、その代表としてアスコルビン酸(=ビタミンC)があります。

イヌのてんかんの診断法を開発する目的として、大阪府立大学の長谷川哲也はてんかん犬の脳内アスコルビン酸レベルを調べました(2014年)。

・健康犬(18頭)
・てんかん犬 …症候性てんかん犬(19頭)
…特発性てんかん犬(16頭)

測定の結果、てんかん犬のアスコルビン酸量は健康犬のおよそ1/4しかありませんでした。先ほどのGABA(ギャバ)と同様に、アスコルビン酸もてんかん発作時には消費されているようです。

抗酸化物質

てんかんには過剰な興奮性アミノ酸による興奮毒性が関係しています。発作が起きると脳の神経細胞は興奮し、その結果活性酸素が増加します。このままでは脳は酸化ストレスにより傷ついてしまうため、ここで登場するのが抗酸化物質です。

アスコルビン酸は水溶性ビタミン(ビタミンC)であり、強力な抗酸化物質でもあります。自分自身が身代わりとなって活性酸素から脳細胞を守ってくれます。このように、発作が起こると脳内のアスコルビン酸はどんどん消費されるため、てんかんの診断に活用できると考えられています。

てんかんとDHA

くすりとは別に何か栄養素により、てんかん発作を抑えられないかという研究が進んでいます。現在このテーマで注目されているのがDHAです。

女性ホルモンとてんかん

広島大学の石原康弘宏らは、マウスにDHAを給与するとてんかんの発作間隔が長くなるという報告を行っています(2017年)。試験条件は以下のとおりです。

●供試動物 マウス
●グループ
:対照群 …通常のエサ
:試験群A …通常のエサ+DHA
:試験群B …通常のエサ+DHA+女性ホルモン合成阻害剤
●けいれんの発生間隔時間
対照群(180秒)、試験群A(600秒)、試験群B(175秒)

この実験結果から、マウスにDHAを給与するとてんかん発作が抑えられ、そして女性ホルモンの合成を阻害すると発作間隔は元に戻ることが判ります。DHAと女性ホルモンはてんかんと関係があるようです。

女性ホルモンとDHA

ここで女性ホルモンとDHAとてんかんとの関係を整理しましょう。報告者の石原は次のように考えています。

〇DHAを摂取すると脳内の女性ホルモンが増える
〇脳内の女性ホルモンはてんかん発作を抑える
〇DHAを摂取すると発作頻度が低減される

脳内の女性ホルモンの産生を介して、DHAにはてんかんの発生を抑える可能性があるということです。なお、この女性ホルモンは女性だけでなく男性においても産生されています。

発作の引き金

てんかんのペットをもつオーナーの一番の困り事は、いつ発作が起こるは判らないという点ではないでしょうか。てんかん発作には引き金(きっかけ)となる出来事があるといわれています。

助長因子

てんかん発作が起こりやすくなる状況をてんかんの助長因子といいます。これには疲労、ストレス、感情の動き、その他に感染症や発熱などの病気関係があります。

また意外なものとしてシャンプーや野外でのイベント事、さらには天気の変化(特に大きな気圧の低下)などが起こった後には発作が起きやすい傾向があります。

誘発因子

てんかん発作を引き起こす刺激や出来事を誘発因子といいます。私たちの生活におけるてんかんの誘発因子として、次のようなものが報告されています。

〇テレビ …スイッチを入れると大きな音が出た場合
〇照明 …暗い部屋で急に眩しい明かりがついた場合
〇玄関チャイム …比較的大きな音の場合

てんかんは脳の過剰な興奮によって起きます。じわじわと迫る脳へのストレスをベースとして、突然の光や音が引き金(きっかけ)となって発作が起こると考えられます。これら誘発因子を知っていると、ペットがてんかん発作を起こす頻度を少しでも減らすことができます。

現在、ヒトのてんかんでは検査と治療(手術、投薬)に加えて食事療法の開発が進んでいます。今回お知らせしたようにGABA(抑制性アミノ酸)、ビタミンC(抗酸化物質)、そしてDHA(女性ホルモン産生促進)などの大変有望な栄養物質が確認されています。

てんかんは完治することがない疾患ですが、私たちの生活の工夫により、発作をコントロールすることはできると考えられます。ペットとみなさんオーナーのQOL(生活の質)の観点からも、今後有効なてんかんのフード療法の開発が望まれます。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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