「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
失明しないまでも、加齢に伴いペットの視力は低下してゆきます。
視力が衰える原因として前回は水晶体のにごり=白内障を紹介しましたが、もう1つ網膜の機能低下があります。
目次
アントシアニンのしごと
2012年現在、ヒトのアイケア健康食品の市場規模はおよそ450億円、その内ブルーベリー/ビルベリーを含む商品が65%を占めています(富士経済 2013年報告)。
なぜこんなにブルーベリーは人気があるのでしょうか?
眼に良い理由
ブルーベリーが眼に良いということは広く知られていますが、その理由にアントシアニンという物質の働きがあります。
まずは軽くアントシアニンのしごとを見ておきましょう。
前回のおさらいです。
外から入ってきた光は、透明な水晶体を通って網膜上に像を結びます。
この網膜で光の情報は信号に変わり、視神経を経由し脳でモノとして認識されて最終的に「見える」となります。
網膜において、光の情報を信号に変換しているのがロドプシンというタンパク質です。
ロドプシンは光を信号に変えた後、オプシンとレチナールという2つの物質に分解します。
分解してできたこの2つは時間が経つと再びロドプシンに合成されます。
しかし、年齢を重ねるにしたがってそのスピードはだんだん遅くなります。
このロドプシンの再合成を促進するのがアントシアニンです。
体内にアントシアニンを補給すると、ロドプシンの分解→合成→分解→合成というサイクルが活発に回転します。
このようにアントシアニンは、加齢による視力の衰えをサポートしてくれるという訳です。
アントシアニンの正体
ネットでアントシアニンを調べてみると「ポリフェノールの1つ」とか「フラボノイドの1種」とあります。
アントシアニンとは何物なのでしょうか?
アントシアニンはポリフェノールという大きなグループに属しています。
以前「リンゴポリフェノール」のコラムでも紹介したように、ポリフェノールは植物に含まれる色素や渋み、苦みの成分の総称で抗酸化作用をもっています。
ポリフェノールの内、天然の植物色素をまとめてフラボノイドと呼んでいます。
このフラボノイドの1つがアントシアニンです。
従ってアントシアニンはフラボノイドであり、大きい意味ではポリフェノールでもあります。
今回紹介するアントシアニンは現在500種類ほど確認されており、赤色や紫色、藍色などの色素をもっています。
そして最も大切な性状として強い抗酸化力があります。
ということでアントシアニンの正体は「抗酸化力をもつ天然色素」となります。
いろいろなベリー果実
眼に良いと言われているアントシアニンは、どのような食材にたくさん含まれているのでしょうか?
どうやら紫色の植物に多いようです。
アントシアニンを含む食材
アントシアニンはポリフェノール/フラボノイドの1つですので、緑黄色野菜ではなく、濃い紫色系統の野菜や果物になります。
私たちの身近にありアントシアニンを豊富に含む食材は、次の4つのグループにまとめられます。
○野菜類
…赤キャベツ、赤カブ、紫タマネギ、ナス、シソ など
(タマネギはイヌには与えないよう要注意です)
○豆類
…黒豆、小豆 など
○イモ類
…紫サツマイモ(紅イモ) など
○果実類
…ブドウ、イチゴ、ブルーベリー、カシス など
ベリー果実のアントシアニン量
果物の内、アントシアニンをたくさん含むものとしてブルーベリー、ビルベリー、クランベリー、ストロベリー(イチゴ)などがあります。
これら「赤色・藍色・紫色をした小さい果実」をまとめてベリー果実と呼んでいます。
アイケアサプリメントに広く採用されているベリー果実10種類について、アントシアニン含有量と抗酸化能を測定した報告があります(小川健二郎 岐阜薬科大学 2014年)。
調査した10種類の内、馴染みがある5種類のベリー果実について確認すると次のような結果になります。
《アントシアニン含有量(乾燥100gあたり)》
・ビルベリー(1,515mg)
・カシス(811mg)
・ブルーベリー(468mg)
・イチゴ(233mg)
・クランベリー(204mg)
最近よく耳にするビルベリーやカシス、そしてお馴染みのブルーベリーに多くのアントシアニンが含まれている事が判ります。
ベリー果実の抗酸化力
ベリー果実が眼に良いと言われるのは、抗酸化能をもつアントシアニンをたっぷり含んでいるためです。
しかしベリー果実には、アントシアニン以外の抗酸化物質も存在しています。
抗酸化力の指標の1つにラジカル消去能というものがあります。
「ラジカル」とは不安定な状態という意味で、この状態の物質は安定になろうとして周囲をどんどん酸化します。
これよりラジカル消去能=抗酸化能という意味になります。
前回、活性酸素と白内障の関係について述べました。
この活性酸素とはラジカル状態の酸素のことをいいます。
活性酸素は自身の安定化のために周囲の細胞を次々と酸化してゆくということです。
《抗酸化力(ラジカル消去能)》
・ビルベリー(61%)
・カシス(52%)
・ブルーベリー(28%)
・イチゴ(25%)
・クランベリー(36%)
このようにアントシアニンに限定せず抗酸化力の面から見ると、ビルベリーはもちろんのこと、少々意外ですがカシスやクランベリーもアイケアに貢献する力をもっていると言えそうです。
なおクランベリーは、ヒトの尿路感染症対策としての活用報告が多数あり、ペットの膀胱炎や尿石症対策としても応用が期待されているベリー果実です。
ブルーベリーアントシアニン
ブルーベリーの収穫時期は夏ですが、近頃は冷凍品が入手できるようになりました。
アントシアニンの補給として、ブルーベリーを利用する時の注意点を確認しておきましょう。
加熱の影響
ブルーベリーアントシアニンの熱安定性についての研究報告があります(菅 忠明ら 愛媛県工業技術センター 平成19年度)。
これによるとミキサーでつぶしたブルーベリーの熱に対する安定度は次のような結果でした。
《アントシアニンの残存量(ブルーベリー100gあたり)》
○非加熱 …337㎎
○加熱(75℃×15分間) …333㎎
○加熱(100℃×15分間) …284㎎
生果実のブルーベリーは、ジャムやソースの材料として使用されることが多いと思います。
この時砂糖を入れて加熱しますが、長い時間グツグツと沸騰させると大切なアントシアニンが15%程度も失われてしまいます。
加熱条件としては75℃で15分間までとすると、生のブルーベリーとほぼ等量のアントシアニンが保たれます。
存在部位
生のブルーベリーを切ると皮の部分は青紫色をしていますが、内部の果肉はさほど色は濃くありません。
非加熱のブルーベリーのアントシアニン分布は果肉部分が14.2%、皮部分が85.8%という割合になっています。
アントシアニンの大部分は青紫色の皮に存在しています。
アントシアニンの消失を極力抑える加熱条件は75℃で15分間でした。
この条件でブルーベリーを加熱すると、アントシアニンの存在割合は果肉部分が53.4%、皮部分が46.6%とほぼ同量になります。
これは加熱によって皮の細胞が破壊され、内部のアントシアニンが流出するためです。
サプリメントではなくブルーベリーからアントシアニンを摂る場合は、生もしくは過度の加熱を避けて果肉だけでなく皮も一緒に利用することが大切です。
前回は水晶体のにごり、そして今回は網膜の機能低下に着目してペットの視力低下について解説しました。
どちらも加齢に伴う酸化ストレスが背景にあります。
このため目のケアには抗酸化物質、特にアントシアニンが有用であることが判りました。
高齢ペットの視力低下対策として、ベリー果実を使った手作りフードやおやつ、またアントシアニン配合のアイケアサプリメントなどがお薦めです。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。