去年の冬に比べると今年の寒さは厳しく感じます。寒い夜は暖かくして眠りたいものですが、みなさんは寝る時はペットと一緒ですか、それとも別々ですか?
目次
【寝る時はペットと一緒?別々?】
イヌとネコのオーナー870人を対象にした「ペットとの睡眠に関するアンケート」という調査報告があります(アイペット損害保険㈱ 2017年)。みなさんの家庭と比べながら見てみましょう。
寝る時は一緒
まず1つ目の質問です。
質問)寝る時はペットと一緒ですか?
回答)
・いつも一緒に寝る(32.8%)
・時々一緒に寝る(26.0%)
・まれに一緒に寝る(8.1%)
・ペットと一緒に寝ない(33.1%)
頻度の差はあれ「ペットと一緒に寝ている」と回答したオーナーは67%と全体のおよそ2/3でした。そのうち、いつも一緒に寝ているオーナーは約33%、別々に寝ていると回答したオーナーの割合も同じく33%でした。
季節との関係
寒い夜はペット、特にネコと一緒だと暖かくてよく眠れそうな気がします。先程の調査とは別に、ペットと一緒に寝るオーナーの季節別のデータがあります(ペット&ファミリー少額短期保険㈱ 2014年)。これによると、犬オーナーと猫オーナーとでは少々違いがあることが判ります。
《愛犬と一緒に寝る割合》
春(33.4%)、夏(28.4%)、秋(34.6%)、冬(36.6%)
《愛猫と一緒に寝る割合》
春(27.6%)、夏(15.6%)、秋(32.4%)、冬(40.8%)
イヌでは一年を通しておよそ33%のオーナーが一緒に寝ているようですが、ネコの場合は夏にその割合がグッと下がり、冬は上がっています。暑い夏は一緒に寝るのを敬遠されるネコですが、逆に寒い冬は人気があります。
ちなみに平常時の体温はイヌもネコも同じく38~39℃です。体温36~37℃のヒトが抱いた時、どちらも夏は熱く冬は暖かいはずですが、なんとなくネコは暖かい動物というイメージがあるのでしょう。
36年前の調査結果
およそ30%のオーナーはペットと一緒に寝ているようですが、この割合は近年のペットブームによるものでしょうか?東京農工大学の林谷秀樹らは「わが国におけるイヌおよびネコの飼育実態調査(1987年)」という論文の中で、次のような結果を報告しています。
●調査時期 昭和60年
●調査対象 イヌ(2,649頭)、ネコ(745頭)
●調査内容および結果
質問)ペットの寝る場所はどこですか?
回答)家族と同じ同じふとんで寝ている
…イヌ(32.9%)、ネコ(50.3%)
このように36年前の昭和60年時点でも、現在と同様にオーナーの30~50%はペットと一緒に寝ているという結果でした。ペットと眠りを共にするという行為は、オーナーのみなさんの愛情表現の1つということでしょう。
【一緒に寝るオーナー】
ここでアンケート結果に戻り、ペットと一緒に寝ているオーナーが日頃注意している点を見てみましょう。
ペットの寝る位置
質問は「ペットが寝ている位置はどこですか?」です。これに対する回答は足元(54.3%)、お腹のあたり(43.0%)、枕元(39.0%)、その他(4.2%)となっていました(複数回答)。
少し意外な気がするのはペットの顔が見える「枕元」よりは、ふとんの中である「足元」や「お腹のあたり」という答えが多かったことです。これにはアンケートの対象が、大型犬やネコのオーナーも含まれていることが背景にあると思われます。
一緒に寝る時の注意点
みなさんの寝相は良い方でしょうか?ペットと一緒に寝ているオーナーがいつも気にしている点はこの寝相と関係があるようです。
質問)ペットと一緒に寝る時に気をつけている点は何ですか?
回答)事故のリスク(74.2%)
衛生面(8.4%)
その他(17.4%)
3/4近くのオーナーが注意しているのは、一緒に寝ている時に発生する事故リスクでした。ペットがベッドから下に落ちないか、寝返りをうった時に下敷きにしてしまわないかなどのケガに対する心配でした。小型犬を飼われている寝相の悪いオーナーのみなさんは特にご注意ください。
ここで2つ目の注意点として「衛生面」というのがあります。具体的な対策として「ペットと一緒に寝ているシーツをこまめに洗濯する」というコメントがありました。回答率は低く全体の8%弱ですが、とても大切な事と考えられます。
【別々に寝るオーナー】
ここで視点を変えて、ペットとは別々に寝ているオーナーのみなさんの意見を確認しましょう。
一緒に寝ない理由
冒頭のアンケート結果において、ペットとは一緒に寝ないと回答したオーナーの割合は全体の33%でした。その理由は、寝る時ペットが寄って来ない(17.9%)、しつけ(14.9%)、室外飼育(11.1%)、自分以外の家族と寝ている(8.7%)など様々ですが、最も多かった回答は「衛生面への配慮」で31.9%でした。
この場合の衛生面とはもちろん家族側の衛生です。具体的には「毛が抜けて衣類や寝具に付くのがイヤ」や「ダニなどが心配」というコメントがありました。
いつもペットといたいものの、抜け毛やダニなど家族への衛生面のことを考えると一緒に寝るのは控えているという考えのオーナーも多いようです。
寝具の洗濯頻度
先程のアンケート結果でペットと一緒に寝ているオーナーが気をつけている点に「シーツをこまめに洗濯している」というものがありました。みなさんはふとんやベッドのシーツはどれくらいの頻度で洗濯していますか?
P&Gジャパン㈱は20〜49歳の働くお母さん300人を対象に、夏場の寝具のケア頻度結果を発表しています(プレスリリース 2018年)。これによると全体の半分以上の方が「週1回は実施できていない」と回答されています。寝具の洗濯や除菌ケアはなかなか毎日できないのが現実です。
《シーツのケア頻度》
・毎日(1.3%)、週2回以上(6.7%)、週1回(31.9%)
・週1回より少ない(60.1%)
《枕カバーのケア頻度》
・毎日(2.4%)、週2回以上(11.4%)、週1回(34.1%)
・週1回より少ない(52.0%)
《枕のケア頻度》
・毎日(2.2%)、週2回以上(4.5%)、週1回(24.2%)
・週1回より少ない(69.2%)
両者における衛生面の配慮
今回のアンケート結果を見ていると、ペットと一緒に寝ているオーナーと別々に寝ているオーナーの両方の回答に「衛生面への配慮」というワードがありました。ではこの「衛生」とは誰に対する衛生でしょうか?
ふつうペットと同じふとんで眠るというと、ペットからヒトへの微生物の感染(細菌、カビ)やアレルギー原因物質=アレルゲン(被毛、ダニ)が頭に浮かびます。
しかし、これら寝具を介した健康リスクはペット→ヒトへの一方通行だけではありません。ヒト→ペットすなわち、私たちヒトに由来する微生物が一緒に眠るペットの健康を害する可能性も考えられます。
ペットと一緒に寝るか、それとも別々に寝るかはオーナーのみなさんが決めることですので答えはありません。しかし、お互いの健康維持のためには衛生ケアの意識は持つようにしたいものです。その1つとしてシーツやタオルなどの寝具のこまめな洗濯はとても大切です。次回は洗濯と除菌・殺菌との関係について考えます。
(以上)
執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。