獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「アスタキサンチンと体重管理」

夏場のペットはパンティングと皮膚からの直接放熱によって体温を調節しています。しかし全身の被毛が放熱を邪魔し、加えて年齢と共に増加する体脂肪が熱を蓄えるという不利な点があります。熱中症予防はもちろんのこと、日頃の健康維持のためにもペットの肥満防止・体重管理は大切です。

【秋からの体重管理】

とにかく暑いこの時期において最も有効な熱中症対策は、外出を控えることです。適切にエアコンを使って室内で過ごすのが一番ですが、となると気になるのが肥満です。

減量達成率

ペットの肥満には犬種や不妊処置の有無、そして生活スタイルが大きく関わります。散歩を控えてひと夏を家の中で過ごした結果、秋頃には体重がアップしていたというのはよく聞く話です。

一般家庭で飼育されている肥満犬の減量活動についての調査結果があります(坂巻彩夏 酪農学園大学 2016年)。対象犬は初診時の年齢が2~11歳、BCSは3.5~5の10頭です。それぞれBCS 2.5~3を目指して目標体重を設定し、平均252日間の減量活動を実施しました。

結果では目標体重に到達した症例は10頭中3頭、減量達成率の範囲は15.6~143.3%、平均達成率は70.7%でした。なお達成率が100%以上とは目標体重以上の減量に成功したという意味です。みなさんも経験済みにように家庭でのペットのダイエットはなかなか難しく、結果には大きなばらつきが見られます。

理想的な減量パターン

調査では長期間にわたり対象犬の減量データをとっています。では対象10頭中で最も減量に成功した症例No.1の体重、除脂肪量、脂肪量のデータを見てみましょう。

体重および脂肪量は期間中順調に減少しています。除脂肪量とは「体重-脂肪量」のことで、内臓や筋肉の重量と考えてよいでしょう。この値はほとんど変化がありませんでした。これより理想的な減量パターンとは、筋肉重量は落とさず、体脂肪を主体として全体体重を減少させるものといえます。

適切でない減量パターン

次に減量が上手くいかなかった症例No.2のデータを確認しましょう。調査終了時の体重と除脂肪量は開始時よりも増加しています。そして脂肪量は成功例と比べるとしっかりとした減少は見られませんでした。

体脂肪は減少せず筋肉重量が増加し、減量活動中のはずですが結果として体重はいっこうに減らないというパターンです。

【体脂肪の燃焼】

体脂肪は毎日コツコツため込んだ栄養分の貯金のようなものです。いざ飢餓状態になった場合、この脂肪を燃やしてエネルギーを取り出し生きてゆきます。しかし、非常事態というものはそうそう起きるものではありませんので、貯金=脂肪のため込み過ぎは健康にはマイナスに働いてしまいます。

ポイントは体脂肪率

ダイエットというと体重の調節というイメージありますが、この体重には内臓や筋肉重量も含まれています。本当に減らしたいのはこれらではなく、過剰にたまった体脂肪です。ということで先ほどの2例の体脂肪率を比較してみましょう。

前回、イヌの平均体脂肪率はおよそ30%と紹介しました。理想的な減量パターン(症例No.1)の減量開始時体脂肪率は約32%でした。これが終了時には約20%まで順調に減少しています。対して適切でないパターン(症例No.2)の場合は、40~45%の間で増減を繰り返す動きを見せています。

このように愛犬の減量では体重の増減というよりは、体脂肪率の変動で評価すべきということが判ります。

呼吸と呼吸基質

ここで少し脂肪の燃焼ということについて考えてみようと思います。燃焼とは体内で栄養分を材料にしてエネルギー(熱)を作り出すことで、この作業が呼吸です。呼吸の働きを式にすると「呼吸基質+酸素→エネルギー+水+二酸化炭素」となります。

ここで出てきた呼吸異質とはエネルギーの素になる栄養分のことで燃料にあたります。具体的には炭水化物、タンパク質、脂質が呼吸基質になりますが、動物が呼吸をした時、燃料の違いにより吸い込む酸素量と吐き出す二酸化炭素の割合が異なります。これを呼吸商(こきゅうしょう)といいます。(ちなみに「商:しょう」とは割り算値のことです)

それぞれの呼吸基質の呼吸商は炭水化物(1.0)、タンパク質(0.8)、脂質(0.7)とされています。これは同じ量の酸素を吸って呼吸をしたとしても、炭水化物よりも脂質の方が吐き出される二酸化炭素の量が少ないという意味です。実験で呼吸商を測定すると、呼吸基質(燃料)として何を使っているかが推察できます。

【アスタキサンチンの活用】

アスタキサンチンという物質があります。テレビや雑誌では強力な抗酸化力をもつ赤い色素として紹介され、サプリメントや化粧品に利用されています。ここではこのアスタキサンチンが脂肪をターゲットとした体重管理に有用であるという研究データを紹介します。

体重の増加抑制

高脂肪のエサを給与されたマウスにアスタキサンチンを経口投与して体重の変化を調べた次のような報告があります(Ikeuchiら 東京海洋大学 2007年)。

●供試動物 マウス
●グループ
  高脂肪エサ給与群 
   :アスタキサンチン経口投与(0㎎、1.2㎎、6㎎、30㎎/kg)
  通常エサ給与群
●測定項目
  体重、呼吸商

上記のような試験設定の下で飼育し60日目の体重を測定しました。すると高脂肪のエサを与えられていたグループの中でアスタキサンチンをマウス体重kgあたり6㎎、30㎎経口投与された群では体重の増加が低く抑えられていました。

優先的な脂肪燃焼

アスタキサンチンは体重を調節する作用があることが判りましたが、問題は体の筋肉(=タンパク質)が減っているのか、それとも体脂肪が減っているのか?ということになります。そこで登場するのが呼吸商です。

高脂肪エサ給与グループのうち、アスタキサンチン非投与群と30㎎投与群マウスの60分間の呼吸商を計算しました。すると非投与マウス群は0.9を下回ることはありませんでしたが、30㎎投与群では全体に0.85以下の値を示していました。

両群とも高脂肪のエサを給与されていたため、栄養過多になり体脂肪が増えやすい状態でした。しかしアスタキサンチンを投与されたマウスは増体重が抑えられ、呼吸商は低い値を示していたことから、呼吸基質としては脂肪が用いられていたと推察されます。すなわちアスタキサンチンは体の中で体脂肪を優先的に燃焼させる働きがあると考えられます。

ペットは体の構造からヒトよりも熱中症に弱いため、夏の間はできるだけ外出は控えるのが得策です。するとどうしても運動不足になり、涼しくなったころには体重が増えてしまいます。肥満は過剰エネルギーが脂肪に置き換わりたまってしまった状態です。

ダイエットのポイントは筋肉量は維持して体脂肪を落とすことです。しかし今まで何度もペットの体重管理を失敗されたオーナーは少なくないと思われます。これから涼しくなる季節の準備として、アスタキサンチンを活用し、体脂肪をターゲットとしたペットの体重管理に挑戦してみてはいかがでしょうか。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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