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ペットの栄養編: テーマ「昆布ダシとヌルヌル成分」

和食のダシといえばコンブとかつお節です。かつお節はともかく、一般家庭においてコンブからダシをとるのはなかなか面倒なことです。現在では手軽な粉末の昆布ダシも販売されていますが、乾燥コンブにはおいしさ以外にうれしい健康機能があります。

【コンブの栄養成分】

コンブのうま味といえばグルタミン酸です。海藻類であるコンブにはどのような成分が含まれているのでしょうか。

いろいろなコンブ

コンブ=北海道産というイメージがあります。海に囲まれた日本ではコンブはどこでも採れそうな気がしますが、寒海性の海藻である天然コンブの産地は北海道と東北3県(青森、岩手、宮城)に限られます。この中で北海道産コンブが90%以上を占めているといいます(社団法人 日本水産資源保護協会)。

日本の沿岸で採れるコンブの種類は全部で14種類ほどあります。日高昆布、利尻昆布、羅臼昆布といった有名なものの他に、真昆布(マコンブ)や近頃よく聞くガゴメ昆布といったものがあります。

食物繊維とミネラル

コンブの栄養成分について見てみましょう。コンブは海藻ですのでタンパク質などの栄養素には乏しい反面、食物繊維やミネラルといった健康機能成分に富んだ食材という感じがします。

日本食品標準成分表(2015年版七訂)によりますと、乾燥マコンブ100gあたりのタンパク質量は8.2g、脂質は1.2gと予想通り多くはありません。これに対し特徴的なのが食物繊維とミネラルの量です。食物繊維は27.1g、ミネラルは19.6gもの量が含まれています。

また、いろいろなダシ100gに含まれるミネラルの量を比較してみると、鰹ダシ(0.1㎎)、椎茸ダシ(0.2㎎)、鶏がらスープ(0.3㎎)に対して、昆布ダシは0.5㎎と大変多いことが判ります。

コンブに多いミネラルにはNa(ナトリウム)やK(カリウム)がありますが、海藻類全般に含まれるものとしてI(ヨウ素)がよく知られています。

グルタミン酸の抽出

コンブのうま味の主体はアミノ酸であるグルタミン酸です。お茶の水女子大学の畑江敬子ら報告によると、乾燥コンブに含まれる遊離アミノ酸の内、62.2%をグルタミン酸が占めています(1994年)。まさしくコンブはうま味のかたまりといった食材です。

ではこのコンブからうま味のグルタミン酸を最大限引き出す条件を見てみましょう。乾燥コンブに100倍の水を加え100℃で煮出した場合、20分くらいでグルタミン酸の抽出量は約1,700㎎/だし汁100gとピークを示します(鈴木 健ら 東京水産大学 1993年)。これよりコンブのうま味の抽出時間は、20~30分くらいが最適であることが判ります。

【コンブのヌルヌル】

乾燥コンブやワカメを水に浸けておくと表面がヌルヌルしてきます。このヌメリの正体は食物繊維です。海藻は海の中で成長するため、潮の流れにより擦れ合って傷ができる可能性があります。これを防ぐために表面にヌメリを出していると考えられています。

2つの食物繊維

野菜や果物にたくさん含まれている食物繊維については、今までこのコラムでいくつか紹介してきました。海藻に含まれる食物繊維はこれらのものとは化学的な構造が異なっていますが、からだに対する基本的な機能は同じで次の3つになります。

①腸の運動改善
  …摂取した食物のボリュームを増やして腸の動きを促進する
②腸内細菌の活動応援
  …腸内細菌のエサになり善玉菌を増やす
③消化・栄養吸収の調整
  …余分な糖や脂肪を包み込み腸からの吸収を抑える

このように各種乾燥コンブにおよそ30%も含まれている食物繊維の代表がフコイダンとアルギン酸というもので、これがヌルヌルの正体です。

ヌメリの健康作用

近年、コンブやワカメなど海藻のヌメリ成分が注目されています。フコイダンは水溶性の食物繊維で整腸作用はもちろん、脂質の代謝改善や血糖値の上昇抑制などの機能が報告されています。さらには腫瘍を抑える働き(抗腫瘍作用)やインフルエンザウイルスの増殖を抑える(抗ウイルス作用)といった研究が行われています。

もう一つのヌメリであるアルギン酸は酸性環境では不溶性、アルカリ性環境では水溶性を示す少し特殊な食物繊維です。体内では栄養素の吸収を抑える働きから血糖値やコレステロール値をコントロールする作用があります。
 
なお海藻から抽出精製されたアルギン酸(アルギン酸ナトリウム)は食品にとろみをつける増粘剤・ゲル化剤・安定剤として食品添加物に指定されています。

【フコイダンとアルギン酸】

最後にコンブのフコイダンとアルギン酸の代表的な健康機能に関する研究報告を紹介しましょう。

がんを抑える作用

フコイダンの注目機能といえば抗腫瘍作用です。腫瘍とはコントロールが効かなくなり無秩序に増殖する細胞をいいますが、この1つががんです。フコイダンは次の4つのポイントをもって腫瘍/がんを抑えるとされています(宮﨑義之 九州大学 2016年)。

❶抗腫瘍免疫系の活性
  …腫瘍を専門に攻撃する免疫細胞(NK細胞)を活性化する
❷がん細胞の増殖抑制/細胞死の誘導
  …がん細胞の増殖を抑え自然死するように誘導する
❸血管新生の阻害
  …腫瘍/がん細胞に栄養を送る血管の発達を阻害する
❹がん細胞の転移抑制
  …がん細胞の転移を阻害して他の部位に広がるのを抑える

この中で❷がん細胞の増殖抑制の実験データを見てみましょう。ヒトの乳がん細胞に各濃度のフコイダンを添加して培養した結果、濃度が高くなるほどがん細胞の数が減少していきます。

腫瘍/がんに限らず正常な細胞も含めて、すべての細胞が寿命によって自然死することをアポトーシスといいます。フコイダンにはがん細胞をターゲットとしてその増殖を抑えて自然死させる作用、すなわちアポトーシスを誘導する働きがあるということです。

糖吸収を抑える作用

水溶性の食物繊維には粘り気があるため、一緒に食べたものが胃や腸の中を移動するスピードを遅らせます。これによりブドウ糖はゆっくりと吸収され、食後の急激な血糖値の上昇が抑えられます。東京大学の奥 恒行らはアルギン酸を用いた次のような試験を実施しました(1997年)

●被験者 健康な女子大学生8人(平均年齢21.4歳)
●グループ
  対照群 …25%ブドウ糖液200ml
  試験群 …   〃      +アルギン酸(2.5g、5g、10g)
●測定項目 上記摂取後30分ごとの血糖値を測定

結果ではすべてのグループにおいて摂取30分後に血糖値のピークがみられました。しかしブドウ糖液だけを飲んだ対照群の値が130mg/dlと最も高かったのに対して、試験群ではアルギン酸添加量が多くなるにしたがって血糖値のピークは低くなりました。

また、ブドウ糖液の代わりに糖質の多い和菓子2個(100g、糖質60g相当)を摂取した実験でも同様の傾向が確認されました。このようにブドウ糖や糖質の多い食品を食べる場合、同時にアルギン酸を摂取すると血糖値の上昇がマイルドになることが判ります。

コンブはうま味成分グルタミン酸だけでなく、フコイダンやアルギン酸という特殊な食物繊維を含む健康食材でもあります。家庭では乾燥コンブからダシをとるのは少々面倒ですが、近頃は昆布ダシを使った便利なレトルトタイプのペットフードも販売されています。

昆布ダシをベースにしたフードは、おいしく食べて水分補給ができるという点でとても重宝であることはもちろん、ペットの健康管理にも活用できると考えられます。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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