獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「ビタミンCとフードの保存性」

私たちやペットが普段食べている市販の食品・おやつにはビタミンCが入っているものがあります。ビタミンにはいろいろな種類がありますが、とりわけビタミンCは体やお肌に良いと言われています。今回は少し視点を変えて、ビタミンCと食品の保存性の関係についてお伝えします。

【殺菌活性】

ビタミンC(正式名称:L-アスコルビン酸)は水溶性ビタミンであり、ビタミンEと並んで抗酸化作用があることはよく知られています。ではこのビタミンCに抗菌作用があることをご存知でしょうか?

殺菌活性を示す菌種

菌を殺す薬といえば抗生物質ですが、ペニシリンが世界で初めて発見されたのは1928年です。これより少し遅れて1955年にはビタミンCに抗菌作用があることが報告されています。直接ケガの治療という使い道ではありませんが、今から70年近く前からビタミンCには殺菌活性が確認されていたということです。

各種細菌に対してビタミンCにどれくらいの殺菌活性があるのかを調べた実験報告があります(村田 晃ら 佐賀大学 1990年、1991年、2009年)。試験管の中で細菌とビタミンCを一定時間混合し、その後試験開始時の菌がどれくらい生き残っているか(=生残率)を算出しています。

結果として生残率が高いもの(セレウス菌、酵母)、中程度のもの(ブドウ球菌)、低いもの(大腸菌、サルモネラ菌)というふうに3つのグループに分かれました。生残率が低いほど菌を殺す効果は高いということになるため、ビタミンCの殺菌活性は菌種により大きな差があることが判ります。

酸素の必要性

報告者の村田は、ビタミンCがもつ殺菌活性のしくみを調べるため、大腸菌を使っていくつかの実験を行いました。まず、大腸菌とビタミンCを混合する際に酸素や窒素を添加したり、また真空状態で反応させました。すると菌の生残率は対照(10%)、酸素添加(0%)となりました。すなわち酸素が存在する環境において、ビタミンCの殺菌活性は促進されるということです。

酸素が存在する環境ということはビタミンCが酸化されるということを意味します。そこで次の実験では酸化剤または還元剤を加えた時の大腸菌の生残率を測定しました。

この時、酸化剤添加では0~1%となり、還元剤30~60%と比べて大きく殺菌能力がアップする結果になりました。どうやらビタミンCが殺菌活性を示すには自身が酸化される必要があるようです。

ここで用いた酸化剤は過酸化水素(H2O2)というものです。そこでカタラーゼという過酸化水素を分解する酵素を添加して確認したところ、添加濃度が高いほど殺菌活性は低下していきました。やはり、ビタミンCが殺菌能を発揮するには過酸化水素という物質が重要であるということが判りました。

【食品の保存性】

ビタミンCに抗菌作用があるとこれを含む食品やフードは腐敗しにくい、すなわち保存性がアップすることが期待できます。

殺菌活性のしくみ

村田らは一連の試験結果を元に、ビタミンCがもっている殺菌活性のしくみを次のようにまとめました。まず基本としてビタミンCは酸素や過酸化水素(H2O2)と反応すると、活性酸素を生成します。活性酸素とは酸素が過激化したもので、細菌の外膜を酸化損傷させることで菌を殺します。

もう1つビタミンCは細菌の外膜を通過して内部に侵入します。この時、菌体内の過酸化水素(H2O2)と反応して同様に活性酸素を生成します。そして細菌内部において菌のDNAを変性損傷させることで殺菌します。

なお、酵母に対して殺菌能は見られず、大腸菌やサルモネラ菌には高い活性がありました。この差は菌種によって外膜の構成成分が異なるためと考えられます。すなわち、ビタミンCが外膜を通過して菌内部に侵入しやすい菌種ほど殺菌効果が高いということになります。

酵素カタラーゼ

このようにビタミンCは細菌の外側と内側の両面から作用して菌を殺します。では、私たちやペットがビタミンCを取り込んだ時、体の細胞を破壊しないのでしょうか?

動物の体内には過酸化水素(H2O2)を分解する酵素カタラーゼがあります。ビタミンCの殺菌活性のスタートは過酸化水素による酸化でした。私たちの体の中にはこのカタラーゼがあるため、ビタミンCによる細胞破壊スイッチは入らないと考えてよいでしょう。

これよりビタミンCの抗菌作用はカタラーゼが存在しない食品中で見られる現象ということになります。ヒトやペットの体内で健康を応援するビタミンCは、食品やフード内では殺菌活性により保存性アップという働きをしていることになります。

【調理器具によるビタミンCの分解】

このように魅力的なビタミンCですが、熱に弱いことは広く知られています。このため食事を作る際には加熱時間を短くする必要がありますが、もう1つどのような材質の調理器具を使うのかも大切なポイントになります。

鉄製のフライパン

毎日の食事作りに使うフライパンや鍋の材質として、鉄やアルミ、ステンレス、銅などがあります。この中で鉄および銅とビタミンCの安定性について検討した報告があります(長南隆夫ら 北海道衛生研究所 1987年)。

ビタミンCをいろいろな濃度の鉄イオン溶液に混合して、15分間加熱後の保持率を算出しました。この結果、イオン濃度が0→1→10→100μg/mlと高くなるにつれて、ビタミンCが保持される割合は85.4%→78.2%→74.2%→53.2%と減少していきました。

鉄製のフライパンや鍋を使い、時間をかけて食材を炒めたり煮込んだりすると、イオン化した鉄がビタミンCをどんどん分解していくということです。

銅製の鍋

同様に銅イオン溶液を0→1→5→10ng/ml濃度の順に調整して15分間加熱したところ、ビタミンCの保持割合は85.4%→76.0%→40.4%→34.0%とより大幅に減少していきました。先ほどの鉄イオンの濃度単位はμg/mlでしたが、この銅イオン濃度単位は1,000分の1であるng/mlです。これより鉄よりも銅はさらにビタミンCを分解する力が強いことが判ります。

私たちの食事やペットの手作りフードの保存性をアップするには、鉄製や銅製の調理器具の使用を控えてビタミンCの分解を最小限に抑えることが大切です。

気温と湿度が高くなる梅雨~夏場は食品が傷みやすくなります。ペットの健康維持はもちろん、手作りフード・おやつの保存性をアップさせる意味からもこれからの季節には積極的にレシピにビタミンCを取り入れることをおすすめします。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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