獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「発酵食品:酵母と麹菌」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
7~8年前から大きなブームになっている塩麹や甘酒など、日本にはたくさんの発酵食品があります。今回と次回の2回にわたって、発酵食品とその健康機能についてお知らせします。

パンも発酵食品

発酵食品

みなさんに伺います。朝食はごはんですか、それともパンですか?好きなお酒はビールでしょうか、それとも日本酒でしょうか?というように私たちの食生活には、朝から晩まで発酵食品がお目見えします。

国内外の発酵食品

発酵食品は、日本はもちろん世界中で食されています。頭に浮かぶ発酵食品を元になる材料別に見てみると次のようになります。

〇牛乳
…チーズ、ヨーグルト
〇大豆
…みそ、しょうゆ、納豆
〇野菜、果物
…漬物、キムチ、ワイン
〇穀物
…パン、日本酒、ビール
〇魚介類
…かつお節、塩辛

このように挙げ出したらきりがありませんが、共通しているのは何かしら微生物の力を借りているという点です。

発酵食品の微生物

では、もう少し具体的にどのような微生物が関係しているのか、日本に昔からある代表的な発酵食品を例にして確認しましょう。

●乳酸菌 …みそ、漬物
●酵母 …みそ、漬物、酢、清酒(日本酒)
●麹(こうじ)菌 …みそ、酢、清酒、甘酒

この他にも、納豆菌(納豆)や酢酸菌(酢)などさまざまな微生物が関係していますが、中でも酵母と麹菌の活用頻度が高いような感じがします。

日本の発酵食品にはみそ、納豆、漬物、酢、清酒、甘酒などがあります。

発酵と腐敗の違い

「発酵=おいしい、いい匂い」に対して「腐敗=まずい、臭い」というイメージがあります。そもそも発酵と腐敗は何が違うのでしょうか?答えからいいますと、食品内で起きていることは同じです。

乳酸菌や酵母などの発酵菌が食品の中で増えた場合、おいしそうな味や香りを出してくれます。これに対していわゆる腐敗菌が増殖すると、アンモニアや硫化水素、毒素が産生されます。

このように、ヒトが「おいしい」と感じると発酵であり、「まずい」と思えば腐敗と呼んでいます。発酵も腐敗も共に「微生物が有機物である食材をもとに増殖し、何らかの物質を産生する」という点では同じことです。

納豆やふなずし、ブルーチーズを「発酵」と呼ぶ人がいるのに対して、「腐敗」と呼ぶ人もいるでしょう。つまりは、私たちの感覚次第ということになります。

発酵と腐敗の食品でおきている現象は菌の増加という点で同じだが有害物質や不快臭のある物質などが生産されたり、発酵臭が限度を超えた場合、食用として耐えられなくなる現象を腐敗といいます。

発酵とは?

続いて、微生物のはたらきによる発酵について詳しく紹介します。

発酵の3大微生物

元の食材を美味しく変えてくれる発酵にはさまざまな微生物が関わっていますが、その代表として3種類あります。いわゆる発酵の3大微生物です。

●カビ
・チーズの青カビや白カビが代表です
・清酒造りに欠かせない麹菌もカビの仲間です
●酵母
・パン酵母(イースト)やビール酵母/ワイン酵母があります
●細菌
・乳酸菌とは乳酸を産生する細菌の総称です
・納豆菌や酢酸菌なども発酵において大切なしごとをしています

発酵食品の3大微生物はカビ(青かび、麹菌)、酵母(パン酵母、ビール酵母)、細菌(乳酸菌、納豆菌)などがあります。、

ちなみに微生物というとウイルスも含まれますが、ウイルスは食品・食材内では増殖することはできませんので発酵や腐敗には関係しません。

発酵の3つの効果

発酵食品には次の3つの効果があるといわれています。

①独特の風味
…微生物が食材を分解して増殖する結果、元の食材にはなかった新しい香りや味が生まれます。

②栄養成分の産生
…微生物は発酵時にいろいろな栄養成分を産生します。これより発酵食品は「滋養強壮食品」ともいわれます。

③保存性の向上
…チーズやかつお節、漬物のように水分量やpH を変化させることによって、保存期間の長い食品が出来上がります。

発酵食品の効果は風味がよくなり栄養成分が増し、保存性が高くなるの3つがあげられます。

酵母と麹菌

発酵の3大微生物の内、カビなら青カビや白カビ、細菌では乳酸菌が良く知られていると思います。では酵母や麹(こうじ)菌はどうでしょう。なんだか知っているような、知らないような…。

ビール酵母とパン酵母

酵母と聞くと男性はビール酵母、女性はパン酵母を思い浮かべるかもしれません。この2つの酵母は同じものでしょうか、それとも別のものでしょうか?

酵母が行う発酵では『ブドウ糖→アルコール+炭酸ガス』という反応が起きています。ビールのアルコールや泡はこのはたらきそのもので、酵母はアルコール発酵を行います。

酵母のなかにもいろいろな性質のものがあります。上記の反応の内、アルコールを作る方が得意なものや、炭酸ガスを出すことが得意なものなどさまざまです。

アルコール産生能力が高い酵母はお酒造りに有利ですので、これをビール酵母やワイン酵母と呼んでいます。逆に、炭酸ガスの産生能力が高い酵母では、パン生地がよく膨らむのでパン酵母(イースト菌)と呼ばれています。

このようにビール酵母もパン酵母も分類上は同じ酵母です。(なお、パン酵母もパン生地内でアルコールを産生していますが、焼きあがると飛んでしまっているのでパンを食べても酔いません。)

ビール酵母はアルコールの産生が得意な酵母でパン酵母は炭酸ガスの産生が得意な酵母です。

酵母と麹菌のちがい

ここでは酵母と麹菌のちがいを確認しましょう。まずはこの2つの菌を顕微鏡で見てみると、酵母は雪ダルマ状の形をしています。これに対して、麹菌は植物のようなイメージで頭のところに小さな胞子が無数に付いています。

麹菌ではこの胞子が空気中に飛び散りどんどん増えてゆくわけですが、これはカビと同じ仕組みです。ということで、麹菌は「菌」と呼んでいますがその正体はカビでした。

ちなみにビール酵母やパン酵母は「サッカロマイセス」、麹菌は「アスペルギルス」というのが正式な名前です。このように酵母と麹菌はまったく別の微生物です。

もう1つ酵母と麹菌の決定的な違いがあります。それは、酵母はアルコール発酵を行いますが、麹菌はアルコールを作ることはできないという点です。

麹菌はアルコールを産生しない

ワインと日本酒

先ほど、麹菌はアルコールを作らないと述べましたが、日本酒造りには麹菌が使われています。ではいったい麹菌は何をしているのでしょうか?それはワイン・ビールと日本酒の造り方の違いを見ると良く判ります。

お酒も立派な発酵食品の1つです。このお酒ですが、製造方法には次の3パターンがあります。

①ワイン
・果汁+酵母 →アルコール
・ブドウ果汁中にはブドウ糖が含まれている
・ワイン酵母がブドウ糖を分解してアルコールを産生する

②ビール
・穀類(麦芽)+酵母 →アルコール
・麦芽中の酵素アミラーゼが麦のデンプンをブドウ糖に変える
・ビール酵母がブドウ糖を分解してアルコールを産生する

③清酒(日本酒)
・穀類(米)+麹菌+酵母 →アルコール
・麹菌がもつ酵素アミラーゼが米のデンプンをブドウ糖に変える
・酵母がブドウ糖を分解してアルコールを産生する

酒造りに麹菌が参加しているのは清酒の場合のみです。これは清酒の原材料が米=デンプンであるためです。酵母はブドウ糖からしかアルコールを作れませんので、デンプンをブドウ糖に変えてくれるパートナーが必要です。

麹菌は酵素アミラーゼをもっていて、米=デンプンをブドウ糖に分解することができます。このはたらきを「糖化」といいます。糖化を担当する麹菌は酵母のパートナーとして清酒造りに参加していた訳でした。

以上、麹菌と酵母の役割をまとめると次のようになります。

●麹菌
・糖化(デンプン→ブドウ糖)を担当する
・アルコールは産生しない

●酵母
・ブドウ糖のみ利用できる
・アルコール発酵を担当する

ワインとビールは酵母でアルコールを産生するが日本酒は麹菌を先に使用してブドウ糖を作り酵母でアルコールを産生する。

今回はさまざまな発酵食品を通して、酵母と麹菌がどのように私たちの食生活に貢献してくれているかを見てみました。次回は麹菌を活用した飲み物である甘酒のうれしい健康機能を取り上げようと思います。

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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