獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編: テーマ「コラーゲンとゼラチン」

「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
これから夏場になると、ゼラチンを使った涼しそうなデザートや食事を食べる機会が増えます。またゼラチンとよく似たものにコラーゲンがあります。今回はゼラチンとコラーゲンについて考えます。

コラーゲンとゼラチンの関係

ゼラチンは「お菓子の材料」、コラーゲンは「高級食材」といったイメージはありませんか?どちらもプルプルとした食感をもちますが、この2つは同じものでしょうか、そもそも何から作られているのでしょうか。

コラーゲンとゼラチンの原料

答えからいいますと、ゼラチンはコラーゲンから作られます。従って、コラーゲンが「親」、ゼラチンが「子」という関係になります。

私たちの生活では、ゼラチンの方が古くから活用されていて馴染みが深いのですが、実際の順番からいうとコラーゲンが先になります。

親にあたるコラーゲンは、工業的には牛や豚など動物の骨や皮から作られます。近頃はフィッシュコラーゲンとして、魚を原料にするものも増えてきています。ではざっくりとですが、コラーゲンとゼラチンの製造工程を見てみましょう。

コラーゲンとは?

コラーゲンの正体はタンパク質です。コラーゲンはからだ全体のタンパク質のおよそ1/3を占めていて、特に骨(約20%)や皮膚(約70%)、腱(アキレス腱など)に多く含まれています(ものすごい量です)。

骨や皮においてコラーゲンは、アミノ酸からできた3本の紐(ひも)がより合わさった線維として存在しています。これを3重らせん構造と呼んでいます。

牛の骨を細かく砕いて、カルシウム(Ca)などを取り除くとタンパク質からなるコラーゲンが取り出せます。

ゼラチンとは?

次にこのコラーゲンを加熱すると、3本の線維から成るらせん構造がほどけてばらばらになります。この状態のものがゼラチンです。ゼラチンはちょうど糸くずが丸まったような構造をしています。

ゼラチンはコラーゲン線維がほどけたものですので、正体は同じタンパク質です。そしてアミノ酸構成も基本的には同じです。このゼラチンを粉末状にしたものが、お菓子に使われるゼラチンパウダーです。

近頃、テレビで美容CMを見ていると「コラーゲンペプチド」ということばがよく出ていきます。このコラーゲンペプチドとはゼラチンをさらに酵素でばらばらに分解したものです。ペプチドとはアミノ酸が数個ほどつながったものをいいます。

ゼラチンの特徴

ゼラチンは私たちの生活にいろいろな形で利用されています。ここでは身近なゼラチンについて確認してみましょう。

用途と成分

ゼラチンはペットフードやおやつにも使用されています。食欲がない時や寝たきりの老犬への水分補給として、少し味をつけてゼラチンで固めたゼリーは効果的です。

また、薬やサプリメントのカプセルの原料など食品や医薬品、ヒトの場合では化粧品にも広く使われています。ゼラチンの約86%はタンパク質、水分は12%ほどでその他にミネラルなどが含まれています。

寒天とのちがい

お菓子や料理をプルプルに固めるものとして、もう一つ寒天があります。寒天とコラーゲン・ゼラチンを比較してみましょう。

まずは根本的に主成分が違います。寒天の原料は海藻(天草:テングサ)であり、その正体は食物繊維です。コラーゲンとゼラチンは動物由来の線維状タンパク質です。

次は水に溶けるかどうかです。植物系の寒天はお湯に溶けます。同じ動物系でもコラーゲンは溶けませんがゼラチンは溶けます。これはコラーゲンとゼラチンの構造の違いによるものです。

最後にからだの中での消化性です。寒天は食物繊維ですので基本的に消化されません(大腸の善玉菌ががんばって分解してくれます)。コラーゲンとゼラチンはタンパク質ですので酵素によって消化されます。

このように同じプルプル食材でも微妙な違いがあります。なお、「せんい」ということばですが、植物系は「繊維」、動物系では「線維」と区別します。

コラーゲンの特徴

では、いよいよコラーゲンについて詳しく話をしましょう。コラーゲンは動物性のタンパク質ですが、同じ「肉」とも大きな違いがあります。

アミノ酸組成

コラーゲンも筋肉もタンパク質ですから共にアミノ酸からできています。これら2つのアミノ酸の組成ですが、多い順から挙げてゆくと次のようになります。(伊藤良一ら 森永製菓㈱ 2013年)

○牛肉
…グルタミン酸(約15%)、アスパラギン酸(約9%)、リジン(約9%)
○コラーゲン
…グリシン(約50%)、プロリン(約20%)、アラニン(約10%)

このようにコラーゲンのアミノ酸は筋肉と大きく異なっています。この中で注目すべきは、プロリンというアミノ酸を比較的多く含んでいるという点です。

馴染みがないプロリンですが、これが少し形を変えたものに「ヒドロキシプロリン」というアミノ酸があります。このヒドロキシプロリンは他のタンパク質にはほとんど含まれず、コラーゲンに特徴的に存在しているアミノ酸です。

他にもコラーゲンはヒト、イヌ、ネコの必須アミノ酸であるトリプトファンを含んでいない点など、肉と比べると栄養的な意味は小さいタンパク質です。

消化吸収のしくみ

もう一つコラーゲンが他のタンパク質と異なる点があります。それは摂取した後の消化吸収のしくみです。

肉や大豆などに含まれるタンパク質は食べたあと消化されて、最後はアミノ酸になります。アミノ酸は小腸で吸収されて血液中に移行します。

これに対してコラーゲンも消化されますが、大部分はアミノ酸までばらばらにはなりません。アミノ酸が数個ほどつながった「オリゴペプチド」という形で小腸から吸収されます。

ちなみにペプチドとはタンパク質が分解されて、アミノ酸がいくつかつながったもの、「オリゴ=少ない」ですので、オリゴペプチドとはアミノ酸が5~6個つながったものという意味になります。(オリゴといってもオリゴ糖は関係ありません!)

このようにコラーゲンは何かと一般的なタンパク質とは異なる点がありますが、これがコラーゲンの持つ健康機能と大きな関係があるのです。

皮膚のコラーゲン

コラーゲンはからだの各部分で柔軟性と耐久性を与えています。これを実感する場面がお肌(皮膚)の状態です。

膠原線維

いわゆる「お肌のハリ」は皮膚の膠原線維の量で決まります。膠原線維は皮膚の真皮という部分に存在するもので、その主成分はコラーゲンです。

皮膚は表面から順に表皮、真皮、皮下組織の3層構造をしており、厚さはおよそ2㎜です。膠原線維は格子状となって真皮に存在しています。

コラーゲンは3本の線維がらせん状により合わさった構造(3重らせん)をしていますので、この時点で相当の耐久性があります。膠原線維はこのコラーゲンがさらに組み合わさってできているため、私たちやペットの皮膚に柔軟性を与えているというわけです。

皮膚の水分保持

女性オーナーの方にとってコラーゲンは美容と関係が深いと思われますが、ペットにとっては丈夫な皮膚の維持という意味があります。老犬になるとケガが治りにくいとか、寝たきりで褥瘡(床ずれ)ができているなどなど…。

ヒトもペットも皮膚の老化は、皮膚水分量の減少が大きく関与しています。最後にコラーゲンが消化酵素でペプチドまで分解された「コラーゲンペプチド」と皮膚の水分量との調査データを紹介します(大原浩樹ら 明治製菓株式会社食料健康総合研究所 2009年)。

試験概要は次のとおりです。
○対象
…乾燥による肌荒れを自覚している日本人女性 (25~45歳)
○コラーゲンペプチドの摂取
…1日10g×4週間(37人:このうち27人は30歳以上)
○結果

…摂取前と比較して皮膚水分量の増加が確認された

試験で使用されたコラーゲンペプチドの主成分はヒドロキシプロリンでした。このアミノ酸が皮膚のヒアルロン酸の産生を増加させたことにより、お肌の水分保持能力を向上したと考えられています。

今回は近年健康食材として人気上昇中のコラーゲンについて、ゼラチンや寒天と比較して説明しました。コラーゲンにはヒドロキシプロリンという特徴的なアミノ酸が含まれており、皮膚保水量の維持の他にもさまざまな作用があります。

コラーゲンは栄養源というよりは、健康面に大きな魅力を秘めたタンパク質と言えそうです。次回はさらにコラーゲンペプチドの健康機能について紹介します。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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