獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットとの生活編:テーマ「ペット型ロボットとの暮らし」

昨年から一気に話が進んできた人手不足に対応するため、工場では産業用ロボット、ファミレスでは配膳ロボットなどの導入が進んでいます。また現在検討されている自動運転のトラックやバスもロボットの1つと見ることができるでしょう。さまざまなロボットが登場してくる中、今回はペット型ロボットの普及の可能性を取り上げます。

【3タイプのロボット】

家庭用ロボットの代表格といえば、前回紹介したロボット掃除機です。しかし、ペットにとってはなかなかの強敵といった存在でした。私たちの生活に導入されつつある家庭用ロボットには、この掃除ロボットの他にペット型ロボット、会話型ロボットがあります。みなさんはこの内どれかお持ちでしょうか?

家庭用ロボットの認識度

家庭用ロボットの社会への受入れ度(受容度)を調査した報告があります(野村竜也ら 龍谷大学 2020年)。内容は次のとおりです。

●調査対象 20~60代男女合計300人
●家庭用ロボット
  掃除ロボット …現在市販されているもの
  ペット型ロボット …イヌ型、アザラシ型、恐竜型
  会話ロボット …AI搭載により自然な会話が可能なもの
●調査項目
  認識度、総合的受容度

まず調査対象者に3タイプのロボットを知っているかと尋ねたところ、掃除ロボット(47%)、会話ロボット(40%)、そしてペット型ロボット(37%)という結果になりました。次いで実際にそのロボットを見たことがあるかという問いでは、これも掃除ロボット(31%)、会話ロボット(20%)、そしてペット型ロボット(14%)という順位でした。

3つのロボットの中でペット型ロボットは最も見聞経験が少ないという結果でしたが、メディアを通じて見た/知っているという割合は最も高いことが判りました。これはおそらくSONYが開発したイヌ型ロボット「AIBO」がテレビや雑誌で紹介された時の印象が強かったためではないかと思われます。

社会への受容度

では3タイプのロボットは私たちの生活にどれくらい受け入れられているのでしょうか?見聞経験、機能についての知識、利用意向、使いやすさなどの項目を総合的にまとめて数値化した受容度得点を算出した結果、1位:掃除ロボット、2位:会話ロボット、3位:ペット型ロボットという順位になりました。

ペット型ロボットは掃除ロボットよりも社会に受け入れられていないという結果に対し、ペット好きの皆さんは少しモヤモヤしたものを感じているかもしれません。調査を行った野村はこの理由を「機能と使用目的の明確さ」にあると述べています。すなわちペット型ロボットは「何をするものなのかはっきりしていない」と思われているということです。

【ペット型ロボットへの興味】

ペット型ロボットの評価はあまりぱっとしない様子ですが、一般の人達の興味はどのようなものでしょうか。

家庭用ロボットのイメージ

東京近郊の女子大学生88人を対象にヒトと家庭用ロボットの関係についてのアンケート調査が行われました(市原 信ら 東京家政学院大学 2006年)。この中で家庭用ロボットに対するイメージを聞き取りしたところ、最も多かった回答はセキュリティ(52人)、次いで家事手伝い(40人)でした。

家庭用ロボットにペットのイメージを持っているものでは、家族の一員(29人)、友達(24人)、会話や遊び相手(23人)、そしてペットの代理(21人)という結果でした。またこれよりぐっと低い回答率としてストレス解消(10人)、パートナー(8人)という回答もありました。

このようにロボットにはコンパニオンアニマルとしての役割はあまり求められていないことが判ります。

ペット型ロボットへの興味

ペット型ロボットにはイヌ型やアザラシ型などがあります。これらロボットに対する興味・関心度についての調査データを見てみるとおもしろいことが判ります。アンケート対象者は全国の20~69歳の男女1,000 人、内ペット飼育者は308人です(楽天インサイト株式会社 2021年)。

「ペット型ロボットに興味はありますか?」という質問に対し、現在ペットを飼っている回答者308人では興味あり(29.5%)、興味なし(53.2%)でした。対していつかペットを飼いたいと思っている回答者225人では興味あり(49.3%)、興味なし(42.7%)となりました。

ペット型ロボットはエサやりやトイレの世話が不要で病気にもなりません。購入費を除けはペットオーナーにとってうれしい存在のはずですが、実際には興味・関心度が低いようです。手間がかからないロボットと比べ、実際に生きているペットには何か大きな魅力があるということです。

【ロボットはペットになれるのか?】

最後に私たちはペット型ロボットをペット(コンパニオンアニマル)として受け入れ、一緒に生活できるのか?という点について考えてみましょう。

イヌ型ロボットの評価

前出の市原は、20代前半女性10人に1対1でイヌ型ロボットと15分間遊んでもらい、その時のいろいろな感想を1から5に5段階評価した結果を報告しています(2005年)。

ポイントが高かった感想では楽しかった(4.4)、また遊びたい(4.4)、おもしろかった(4.3)、もっと知りたい(3.9)、不思議な感じ(3.8)、親しみ(3.7)などがありました。対してこれらよりぐっと低い結果としてリラックス(2.6)がありました

感想は1:まったくそう思わない~3:どちらともいえない~5:強くそう思うの5段階であり、3は中立的な評価です。私たちがペットとの遊びに求める「リラックス感」はペット型ロボットではあまり得られないという事です。

ペットに代わる可能性

この実験に参加した女性たちにイヌ型ロボットに望む機能について聞きました。すると多かった意見では遊び相手(7人)、退屈しのぎ(7人)、ストレス解消(6人)、対してペットの代理(3人)、家族(2人)、パートナー(2人)という結果でした。

どうやらイヌ型ロボットはあくまでも遊びのツール・おもちゃであり、私たちはコンパニオンアニマル/家族の一員としての存在感を感じることはできないようです。これよりイヌ型ロボットが生きたペットに代わる可能性は低いと考えられます。

ロボットとはヒトの代わりに作業をしてくれるものであり、ロボット掃除機のように「実用性」が求められます。これに対し私たちはペットに一緒に生活する「喜び」を求めます。

実はこの喜びとはエサ/おやつ、トイレの片づけ、散歩、病気/老齢のケアといった生きた動物の世話をすることで得られるものです。命のないペット型ロボットとの生活では世話をする喜びを感じない訳です。

今後科学技術の向上により次々と新しいペット型ロボットが開発されると思いますが、私たちが求めている「生き物としてのペット」の代わりにはならないでしょう。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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