その他

犬の得意分野 ―― 視覚

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前回のテーマ「犬の得意分野-嗅覚」で、犬の感覚機能で最も優れているのは嗅覚だとお伝えしましたね。
空気中に漂うにおいを敏感にかぎ分ける能力の高さには随分驚かされました。
今回は五感の中の「視覚」についてお話するのですが、さて、私たち人は生まれてどれくらいで目が見えると思いますか。
「えっ? 生まれてすぐは見えていないの?」
と、思われるかもしれませんが、実はまだ視力がはっきりと見えているわけではないのです。

新生児期はぼんやりとしか見えていなくて、視力の機能が発達するのは実は生まれてからなのです。
暗さや明るさは識別できるのですが、その他の色や形がわかるわけではありません。
生まれて1か月、2か月と日を追うごとにぼんやりとしていた輪郭がわかりだし、視力が上がります。

では、犬はどうでしょう。
生まれてすぐの赤ちゃん犬は目を閉じた状態です。
それがやがて、1週間過ぎ2週間を過ぎようかとする頃に、ようやく目が開きます。
視力はぼんやりと見える程度ですが、日を追うに従って目が見えるようになってくるのだそうです。
とはいうものの、人と犬では視力の差があったり視覚にも違いがあったりします。

さあ、今回は犬の目線に立って、どんなふうに景色や形や色が見えているのかをいっしょに見ていくことにしましょう。

犬の目の特徴

目の構造

眼球は三層構造《繊維膜(せんいまく)、脈絡膜(みゃくらくまく)、網膜(もうまく)》で覆われています。
繊維膜の前部にあるのが「角膜(かくまく)」で、光を眼球内に取り入れる役目をしています。

また、脈絡膜の前部には「瞳孔(どうこう)」があるのですが、これは眼球内に入った光の量を調節する働きをしています。
「瞳孔が閉じるとか開く」ということばを耳にしますが、これは瞳孔が明るい場所では小さくなり(瞳孔が閉じた状態)、暗い場所では大きくなる(開いた状態)ことを示しています。

「網膜」は眼球の三層構造の最も内側にあります。
網膜は「杆状体(かんじょうたい)」という暗いところでも動きに敏感な細胞と、色の波長の違いを感じ取る細胞「錐状体(すいじょうたい)」を持ち合わせています。
私たち人には、この錐状体は3種類あるのですが、犬は2種類しかないため多色の色別ができる能力は低いといわれています。

目の形

犬種によって目の形には違いがあり、大きく分けて3つの形があります。
◇アーモンド形(アーモンド・アイ)
文字通りアーモンドのような形をしたもの
パピヨン、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーなど

◇三角形(トライアンギュラー・アイ)
まぶたの外側が吊り上がって三角形のような形をしたもの
柴犬 ブルテリア、アフガンハウンドなど

◇丸型(サーキュラー・アイ)
円形をした形のものや目が出た感じのもの
フォックステリア、パグ、シーズー、チワワなど

目の色

犬の目の大きな特徴として、白目の面積が小さいということに気づきませんか。
クリクリとした愛らしい目、つぶらな瞳・・・白目はどこに?
殆どが黒目ですね。
では、なぜ白目が少ないのでしょうか。
それは、元もと犬の祖先はオオカミなのですが、オオカミのような野生動物は自然界で生き残るのは大変難しことでした。
白目と黒目の区別がはっきりしていると、どの方向に視線を向けているのか、その先にいる何を狙っているのかなどを覚(さと)られてしまい獲物を逃したり、また、他の動物に襲われるという身の危険を招いたりすることになります。
そのため、黒目の面積が大きいほど目の動きを察知されにくいという効果があるのです。
その名残が犬の目にも残っているのですね。

多くの犬の場合、目の色は黒色ですが、犬種によっては黒、茶色、グレー、グリーン、ブルーなどがあり、メラニン色素が多ければ色は濃いですし、少ないと色は薄いのです。

また、「虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)」により左右の目の色が違うものを「オッドアイ」というのですが、これは遺伝による先天的なものや怪我や病気などによって後天的に起こるものです。
また、目の中で茶色と青が混ざった「マーブルアイ」の色を持つ犬もいます。

犬が捉える風景

視野

さて、顔を真っすぐに正面に向けて両手を真横に広げてみてください。
顔を動かさずに目だけを右方向、左方向に移動させたとき、あなたはどの範囲まで見ることができますか。
両サイドの腕や手がしっかり見える人もいれば、ちょっと手の先が見える程度の人もいることでしょう。
人の全体視野(右目と左目の視野の合計)の広さは、180度から200度くらいといわれています。
ところが、犬の場合は210度から270度くらいの広い範囲を見ることができるのです。
これに対して、対象物を立体的に認識する両眼視野で比べると、人の場合は120度に対して、犬の場合は80度くらいです。
この両眼視野が狭いことで、狙った獲物の動きをピンポイントで捉えることができるといわれています。

散歩をしているときなど、急にリードを引っ張って駆けて行こうとするときは、「あそこに何かあるよ」「あっちへ行ってみたいよ」と、何か気になるものを発見して飼い主さんを急かしているのかもしれませんね。

色のとらえ方

さて、私たち人は赤色、緑色、青色の三色の光を組み合わせてたくさんの色を識別できますが、犬はどうでしょう。
カリフォルニア大学の眼科学研究者のニーツ博士夫妻は、たまたま飼っていたプードルが芝生でオレンジ色のボールを追いかけているときに、そのボールを見失ったことに注目しました。
芝生以外の場所で同じようにボールを追いかけているときは、ちゃんとボールを取ってくることができるのに、芝生にあるボールはなぜわからないのだろう……という小さなきっかけが「犬の色覚」への研究の始まりだったのです。

その後、数々の実験を重ねた結果、犬は赤色や緑色などの区別がつきにくく同じ色として捉えているということがわかりました。
ですから、緑の芝生にオレンジ色(赤系)のものを同一の色と捉えたため区別ができなかったのですね。

それまで犬は、モノクロの色覚だけで景色や物を捉えていると思われていたのですが、犬には識別できる色があることがわかったのです。
それが、黄色・青色・灰色です。

愛犬が色別できる色のおもちゃで遊んであげると反応が良いかもしれませんよ!

視力

色覚はわかりましたが、では、犬の視力はどのくらいなのでしょう。
レンズの役目をする水晶体は犬の場合、人の2倍といわれていて8mmほどの厚さがあります。
牛乳瓶の底からものを見るとぼやけて見えるあの感じを想像しましょう。
そのため人よりも近視だといわれていて、視力は0.2~0.3ほどですから焦点を合わせることが苦手なのです。
物体や風景をぼんやりぼやけた視界の中で見ている代わりに、その視力の弱さをカバーしているのが嗅覚や聴覚の鋭さということなのでしょう。

そして、犬の視力で驚くのは「動体視力」といわれるものです。
ふつう私たちが「視力」を測るとき、一定の距離からパネルにある文字や記号を答えていき、その見え方によって視力を決定します。
この検査は静止した状態で測り「視力」と定義付けられていますが、対象物が動いているときにそれが何かを瞬間的に捉えて識別するのを「動体視力」といいます。
犬がテレビの画面をどのように見ているのかというと、コマ送りのようにしっかりと捉えているらしいのです。

ボールやフリスビーを投げたとき犬が飛びついてキャッチするのを上手いなあと感じたことはありませんか。
これも動体視力を活かした得意技の動作だといえるでしょう。
野生動物の場合、動いている獲物を捕らえるとき、または捉えようと逃げる獲物を追いかけるときなど、動く対象物をしっかりと見定める力が長けているのも動体視力が優れているからです。

暗闇で光る眼

犬の画像を見ていると、ときおり両目をキラリと光らせているものをみつけます。
フラッシュなどの光か何かでしょうか。
実は犬の網膜の裏には光を反射する「タペタム」・「輝膜(きまく)」と呼ばれる層があります。
これは、猫、牛、馬などにも見られます。
タペタムは入射した光を反射・増幅させることができる高い光感受性を持っているので、闇夜の中の弱い光であっても物体を認識できるのです。
元もと夜行性だった犬は、獲物を捕らえたり身を守ったりするための進化の過程で、弱い光でも見える能力を高めていったのです。

カメラのフラッシュ、車のライトなどに反射して目が光って見えるのはこの「タペタム」だったのです。
ただし、瞳の色がブルー系のシベリアンハスキー犬などは、このタペタムを持たないといわれています。
虹彩が薄い青色をもっているため、光を通しやすいのだそうです。
もちろん、私たち人にも備わってはいません。

このような機能を持ち合わせた犬も猫も、写真撮影などでフラッシュを当てると過剰にその光を感じてしまうことから目にはよくありません。
できるかぎりフラッシュを使わずに可愛い瞬間を撮ってあげましょう。

かかりやすい目の病気

涙やけ(流涙症)

 《症状》
 ●大量の涙が溢れ出て目頭や目の周りが濡れる
 ●目の下が黒く汚れたり、鼻筋に涙のラインができたりする
 ●目の周囲が常に濡れているため細菌が増えて皮膚炎を起こす
 ●顔全体の広範囲にまで及ぶことがある
  ・トイプードル、シーズー、パグ、マルチーズなどに多い
 
 《原因》
 ●逆まつ毛・眼瞼内皮症・結膜炎など
 ●食べものなどの成分による老廃物により鼻涙管が詰まる
 ●アレルギー
 ●生まれつき涙管が細い
 ●目の周りの筋肉の未発達により涙の排泄が苦手
 ●アレルギーなどによる角膜の炎症

角膜炎

 《症状》
 ●涙が多く出る
 ●光を異常に眩しがる
 ●目を痛がったり目をこすったり、また瞬きの回数が増える
  ・チワワ、パグ、シーズー、フレンチブルドッグなどに多い

《原因》
 ●細菌やウィルスによる感染など
 ●異物、まつ毛の生え方の異常などにより結膜が刺激され炎症を起こす
 ●目の怪我
 ●涙やけなどの放置

結膜炎

 《症状》
 ●白目の部分に炎症を起こし充血する
 ●瞬きが多くなる
  ・マルチーズ、キャバリア、シーズー、パグ、ブルドッグなどに多い

 《原因》
 ●ゴミなどの異物が目に入ることよって炎症を起こす

緑内障

 《症状》
 ●眼球内の「房水(ぼうすい)」の眼圧が上がり視神経を圧迫する
 ●激痛を伴う
 ●視野が狭くなるため物にぶつかりやすくなる
 ●進行すると失明に至る
  ・柴犬、シーズー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどに多い

 《原因》
 ●ブドウ膜炎(虹彩や毛様体などの膜が炎症を起こすこと)などの目の病気によって、瞳孔などが詰まり眼圧が上がる
 ●遺伝によるもの

白内障

 《症状》
 ●水晶体が白く濁り視界が霞んで見える
 ●ものにぶつかる回数が多くなる
 ●眼球が白く濁った色に変色する
  ・コッカースパニエル、ビーグル、ゴールデンレトリバー、プードルなどに多い

 《原因》
 ●遺伝性のものとして若年性白内障がある
 ●加齢に伴う老化現象
 ●外傷や他の病気との併発

愛犬の目を大切に守るために

お手入れの方法

上記の「犬がかかりやすい目の病気」を見ると、症状に現れるのは
・涙やけ
・目ヤニの色や量
などが挙げられます。

目の周りを足で掻いたり目が充血していたり、いつもと違う様子に気づいてあげることが、目の病気の早期発見、早期対処になりますね。

しかし、目はデリケートな個所ですからお手入れは丁寧にしましょう。

◆目の周りの伸びた毛などが目に入るのを防ぐために、トリミングなどで短くカットする
◆目ヤニは濡れたウェットティッシュなどでやさしく拭き取る
◆被毛や皮膚にやさしいお手入れ用ローションなどを使う
◆素材のやさしいコットン系などのガーゼで目の周りを拭き取る

注意)ティッシュペイパーは繊維質で細かなケバが立っているので、使用すると余計に目に入ったりします。
できる限り愛犬にやさしい素材のものでお手入れをしましょう。

食事面からのケア

遺伝的要素のある目の病気については、なかなか治療が難しいものがあります。
しかし、「涙やけ」などの症状は、毎日愛犬が口にするフードに含まれる添加物などによるものが原因といわれています。
ならば、食事の改善をすれば涙やけが良くなると考えるのは、ごく自然のことですね。
できれば愛犬の食事は、添加物を含まない消化吸収に優れた安心安全なものを与えてあげましょう。
食事を変えたとたんに涙やけが良くなったり毛艶まで良くなったりしたという飼い主さんも多くおられます。

加熱処理されたドライフードなどの食べ物に含まれるたんぱく質は消化吸収が悪く涙管にたんぱく質の代謝副産物がこびりついたり、涙の成分もドロドロとして流れにくくなったりします。
それが涙管壁などの細胞が剥がれたものと固まったりして涙管を詰まらせる原因になるのです。

また、アレルギーによる目の炎症というのもあります。
安価なドッグフードなどには添加物を多く含んでいるものがあり、消化吸収しきれずにその物質が体内に蓄積されてアレルギーを引き起こす原因を作り出します。
ドッグフードに使われることの多い牛肉、乳製品、小麦、鶏卵、大豆、トウモロコシ、食品添加物などで食物アレルギーを起こした場合、症状のひとつとしてアトピー性皮膚炎を発症することがあります。
アレルギーの原因となる「アレルゲン」が犬の皮膚や呼吸器をとおして体内に入り込み、さまざまな症状を引き起こすのです。
アトピー性皮膚炎になると「痒み」を伴います。
ひどくなると足や爪で掻きむしり傷をつくりますし、その傷口からさらに二次感染を起こします。
目の周りが痒くなれば当然掻きむしりますから、目の炎症を引き起こす大きな原因にもなるのです。

では、どのような食べものを与えるのが良いのでしょう。
躾のご褒美に与えるおやつならば、無添加で砂糖など使用していない素朴な手作りクッキー類やフルーツなど加工をしていない素朴な食べ物がおすすめです。

また、毎食の食事はできるかぎり添加物の無いものを与えてあげましょう。

《生肉(とくに馬肉や鹿肉)》
酵素・ミネラル・ビタミンが豊富に含まれていますから消化吸収をスムーズに促しますし、免疫力のサポートやアレルギー予防に良いといわれています。

《生食ローフード》
生肉を中心に生贓物・生骨・発酵野菜や果物を原材料した栄養バランスの整った総合栄養食のことです。
これには、酵素や乳酸菌など様々な有用菌がたっぷり含まれているため消化に優れていますし、免疫力を高める働きをします。

涙やけや食物アレルギーによる目の炎症で悩んでおられるのならば、愛犬の食事を見直すチャンスかもしれませんね。

【目は口ほどにものを言う】という諺があります。
人間の言葉を話せなくても、愛犬はじっと飼い主さんを見つめ心を通わせています。
愛犬のキラキラとした愛らしい瞳が、飼い主さんであるあなたをみつめてくれると嬉しくなりますし、また、愛犬も飼い主さんが、やさしいまなざしで見つめてくれると安心できます。
見つめ合う瞳の中にはお互いの信頼関係がちゃんと映し出されているものです。
そんな愛犬のかわいい目が健康であり続けるためにも、視覚の特徴をしっかり理解することで、いっそう愛犬の気持ちに寄り添ってあげることができるはずです。

あなたの大切な愛犬が、いつまでも健やかな日々を過ごせますように。

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